僕らの世界4 (ページ38)

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不登校という生き方・2 ページ38

「学校に行かない分、俺なりに色々やろうと思ってるんだよね」
海斗は、ジュースを飲んで一息ついてから言った。
「へー、例えば？」
「資料とか色々集めた。あと、参考書とか買い込んだから、これで勉強しようと思う」
海斗は、本棚からドサドサと参考書を出してきた。
『5教科完全マスター』
『中学理科 3』
『中学公民』
『中3数学問題集』
参考書は、5教科合わせてざっと15冊はある。あまりにもドサドサ積むので、テーブルの天板が抜けるんじゃないかと思ったほどだ。
「すごい、こんなに？」
「おう。俺、今までは買って満足してたけど、いい加減ちゃんとやろうと思って。去年のテストも、ショージが教えてくれて成績上がったから、俺って実はやればできるタイプかもしれないし」
「おお、頑張れ」
僕が笑顔でそう言えば、海斗も「頑張ってみるよ」と返した。海斗の口から自分に対する前向きな言葉が聞けて嬉しかった。
「それから、渚学園高等部の青葉先輩…真帆のいとこで、生徒会の人ね。ジョギングに誘われた」
「え、そうなの？…どういう経緯で？」
「この間高等部に潜入した時、走りを誉められてさ。それで、一緒に走らないかって声かけられた」
「海斗、元々は陸上部だしね」
「一応ね。1年の11月で辞めたから、ブランクはあるけど」

海斗は、自分なりに考えてるんだ。そう思うと、僕がいかに何も考えていなかったかに気付く。
不登校についての資料を集めたり、環境を整えたり、自分で色々やっている。自分のことは自分で考えて、自分でやる。
海斗はそうやって、海斗だけのルートを進んでいこうとしている。それに対して僕は、何も考えていなかった。「学校に行きなさい」と言われて、行く。「授業を受けなさい」と言われて、受ける。当たり前だけど、海斗はそんな当たり前を引っくり返そうとしている。そう考えると、海斗はすごいことをしている。

「すごいな、僕、応援するよ」
「ありがと」
海斗は、顔をちょっと赤くして、にへっと笑った。