【転生者物語】最初の切り札 (ページ6)

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第五話ページ6

扉を貫通して飛んできた拳は、ゆっくりと外に沈んだ。

ジョーカーは扉に意識を集中させ、恐らくこれから起こるであろう戦闘に備える。

さっきの衝撃でノブは破損し、ゆっくりと扉が開かれていく。

やがて扉が限界まで開き、敵の姿が露わになった。

隼の描かれた赤黒い服に、黒のジーンズ。頭では黒金色の髪がところどころ跳ね、さらに鋭いつり目がこちらを向いていた。服装や体格などから、間違いなく男と分かった。

男の右腕では、まだ煙があがっている。

「お前･･････誰だ」

先に言霊を放ったのはジョーカーの方だった。鋭い眼光に負けじと、男を睨みつける。

しかし･･････

「ぷっ･･････」

男はなぜか吹き出し、やがて大声を上げて笑った。疑問に支配されたジョーカーは、濁声の老人の方に目をやると、彼もまた、笑い出した。

「なにがおかしいんだ･･････?」

答えをくれたのは、扉を破壊した方の男だった。

「はー。久々に大笑いしたぜ。いいか、お前よく聞けよ」

ジョーカーは頷いた。

「俺の名前はエース。ここで依頼を貰って暮らしてる腕利きさ」

その言葉だけで十分だった。要するに自分は、ただ帰ってきただけの人に、敵意を向けてしまったということだ。

若干恥ずかしさを感じたが、疑問が一つある。なぜエースは、扉を殴ったのだろうか。

「自分で腕利きという辺り、お前さんっぽいな」

「事実だからな。問題ねぇだろ」

疑問とは裏腹に、二人は楽しそうに会話を始めた。

少しするとその会話にジョーカーも加わり、そのまま夜明けまで話していた。

エースは人柄がよく、すぐに仲良くなった。

彼は今の腕利きで、建物に入るとき扉を殴ってから入るという変わった癖を持つらしい。

壊した扉は依頼の報酬金を使って、マスターが直しているという。

マスターとしては、いい感じの運動になるから困ってはいないとのことだ。

＿＿＿＿＿＿「そうだジョーカー。明日一緒に依頼やらねぇか? 報酬は半分ずつでかまわねぇ」

「悪いな。明日はちょっと調べたいことがあるんだ」

「じゃあ、俺が付いてってやるよ」

「いいのか? 報酬はでないぞ」

「へっ、かまわねぇさ。昔名を響かせたあんたの力も見てみたいしな」

「俺は昔さ、今はお前だ。俺も見てみたい。お前の力を」

「決まりだな」

「ああ」＿＿＿＿＿＿