第12話『決断』 ページ12
耳が聞こえないと言った男をアトーンメントのメンバー達が囲む。
綺麗な字でスラスラと紡がれる言葉に一同の視線が集中する。
『名前は?』
『雪見卯月と言います』
ペンでのみ交わされる会話に誰も声を発さない。
そんな中、万理華が「ちょっと貸して」と雪城からペンとメモ帳を奪い取る。
『食べてみればいいじゃん、その果実。耳、聞こえるようになるよ』
その後卯月に向けられたメモ帳には万理華には似合わない達筆でそう綴られていた。
「ついでに澪も一緒に食べな」
と万理華は言う。
卯月はメモ帳に目を向けそして自分の手元にある果実に視線をやる。澪の視線も自然と自身の手元に向いていた。そこには変わらず魅力的な輝きを放つ実が握られている。
魅力的であるがどことなく恐ろしい。そんな果実は澪や卯月の心を惹き付けて離さない。
それでも果実を“食べる”ということには少なからず抵抗があった。
それもそうであろう。彼らにとって果実とは得体の知れないもの。そんなものを口にするということにどれほどの勇気がいるだろうか。それは図り知ることも出来ない。
そんな心の迷いを表すように二人は視線を彷徨わせる。その表情には戸惑いが多分に含まれていた。
沈黙が場に影を落とすがそれも一瞬のこと。
再び万理華がメモ帳に何やら書き込む。
『食べないなら果実はアタシらが回収するよ。そしたらもう耳が聞こえるようになることないと思うけど、いいの?』
万理華の問いかけに卯月は少し考えたあとペンを走らせる。
『食べます。果実のこと、教えてください』
アトーンメント達へと向けられたメモ帳にはしっかりとした字でそう書かれていた。
それを見た万理華は満足そうに笑ってから視線を澪に向ける。
「それで? 澪はどうすんの?」
決心ついた? と彼女は問う。
そんな万理華に澪はゆっくりと、それでもしっかりと頷いた。
そんな一部始終を見守っていた雪城が口を開く。
「それでは一旦本部へと戻ろう」
その言葉にアトーンメントと卯月は歩みを進める。
S街の大通りには再び静寂が訪れた。
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美坂るぅ(プロフ) - 更新日数的に、皆さんのキャラクターがお亡くなりになられていると思われます。 (2017年6月29日 20時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - これ以上リーダーにため口を使うキャラが増えると小説が成立しなくなりそうなのでやめてくだされば幸いです。 (2017年3月29日 15時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - スカビオサさん» 消してあったんですけどね…不具合で戻ってしまったようで… (2017年3月29日 10時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - スカビオサさん» 終わってますよ (2017年3月29日 9時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
スカビオサ(プロフ) - 美坂るぅさん» 更新終わりましたか?? (2017年3月29日 9時) (レス) id: b80a207be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒幕 x他6人 | 作者ホームページ:( ˇωˇ )
作成日時:2017年3月23日 10時