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「はぁ〜〜〜〜」
今日も授業で上手く話せなかった…と猛省しながら帰宅した盧笙。
部屋の電気がついてることに違和感を覚える。
…もしかして!
バン!と勢いよくリビングの扉を開けるとそこにはふざけた色のスーツを着たままソファーでダラける簓の姿があった。
「お〜おかえりぃ!待っとったで〜!ほれ!」
ほれほれ!と未開封のビール缶を差し出してくる簓。俺を労いに来てくれたのかと思ったが、そのビールはもしや…
「お前!それ全部俺ん家のやつやろが!どアホ!」
「あいたっ!えー、ええやんええやん!一緒に乾杯しよや〜」
良くないっちゅーのとブツブツと言いつつも部屋着に着替えてソファーに座る。
ほれ、と渡されたビールを受け取り簓と一緒に飲み始める。
つい先日簓と盧笙は通天閣で本気のラップバトルをしてきた後だった。零の助言の元、それぞれ自分と向き合い、互いに腹を割って話し合い、お互い目指すところを確認し、どついたれ本舗の団結力はより、確実に、揺るぎない強固なものになっていた。
零は時たま四葉連れてはふらっと盧笙の家に転がり込み、みんなで食事をしたり、会話をしたり、時には勉強をしたりと、とても充実した日々を送っていた。
「なぁ?四葉ってどんくらい凄いん?頭」
「あぁ、あれはただ凄いってもんやない。天才の中でも類まれな才能を持ち合わせてる。10歳で高一の内容を完璧に理解しよった。」
「ええ!」
「前に零が、四葉に友達が少ないって話しとったやろ。きっとこの才能のせいなんやろな…」
なるほどなーと盧笙と同じように天井を仰ぐ簓。
四葉はとても利口で頭が切れる。がしかしそれは10歳にしては大人びすぎていて、周りと馴染めないのだろう。
きっと学校も面白いものでは無いはず。1度盧笙の家から学校に行ったことがあったが、見送ったその姿は決して楽しそうなものでは無かった。
「俺たちくらいがちょうどええ塩梅なんやろな」
「あぁ、せやなぁ」
天谷奴零は未だに謎多き人物。自称詐欺師と言っているが、普段何をしてるのか全く分からないのだ。そんな男の実の娘は同じく謎だらけであった。
零が酔っ払った時、こんな言葉を零していた。
「──俺は死ぬまでアイツらに償い続けなきゃなんねぇんだ…」
───『アイツ“ら”』…?
先に飲んでた簓が程よく酔いつぶれてきたので、叩き起して帰宅を促す。盧笙は明日も仕事だ。もちろん簓も。
彼らの他愛ない日常は、もうしばらく続く。
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作者名:蒼依 | 作成日時:2022年12月11日 21時