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無花果に連れられようやく観客席の方へと向かい始めた。
観客席に通じる扉の前で無花果が止まる。
「私はこの先へはまだ行けない。だから、合歓に引き継ぐ。」
「合歓…?」
扉が開くとそこには白髪をした綺麗な若い女性が立っていた。
「お呼びでしょうか。」
「合歓、こいつは例の子だ。あとは頼む。」
“例の子”と聞いてすぐわかったのか、この子が…と小さく漏らす。
「悪いが時間が無いのでな、先に行くぞ。四葉、思う存分楽しんでいってくれたまえ。」
そう言って足早に来た道を戻っていく。
本当に急いでいるのだろう……
それなのにこんなにも私のためにしてくれるなんて……
「四葉ちゃんね。私は碧棺合歓。今日の観戦席は私の隣を用意されてるの。一緒に行きましょうか」
そう言ってニコッと笑う。
「碧棺……」
聞き覚えのある名前に首を傾げる。
碧棺って確か……
「碧棺左馬刻。私のお兄ちゃんの名前よ。聞いたことあるよね。ふふ」
四葉が納得したのを見届けから客席へと向かう。
向かった先は関係者用のエリアの最前列。試合を間近で、且つ1番見やすい席だった。
「あの、お姉さんは……その、お兄さんのこと好きですか?」
突然の質問に戸惑う合歓。つい先日まで催眠にかかり兄に対して怒りに近い感情を抱いていたが、今はその催眠は解けている。
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作者名:蒼依 | 作成日時:2022年12月11日 21時