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「せっかくの再会なのに寂しいわね。
ねぇ、四葉。あなた中王区に住まない?ここならあなたに適した教育を受けさせてあげるし、きっと幸せな場所になると思うわ。どうかしら。」

手短にだけどと前置きをして早口で話し始める乙統女。それは四葉を中王区へと誘う言葉だった。

「それは、お父さんたちとは…離れて暮らすという意味でしょうか……?」

「ええ、結果的にそうなるわね。でも中王区は女性のための世界。きっとあなたの為にもなると思うの。」

四葉はうーんと悩むも、直ぐに乙統女に向き合い目を見て話す。

「私は、お父さんと一緒がいい。簓も、盧笙もいる。今は毎日がとても楽しいです。だから、中王区には行きません。」

乙統女は四葉の真剣な顔を見て、眉毛を下げる。

「そう、それならいいの。でももし、あなたがしんどくなった時、私たちはいつでもあなたを受け入れるわ。それだけ、覚えておいてちょうだいね。」

四葉は静かに頷く。無花果がそろそろ、と四葉の手を取る。

「あ、そうそう。私とあなたのお父さんが知り合いということは、他の人には言わないで。これはあなたのお父さんのためでもあるの。

私たちと各ディビジョンは対立関係にあるわ。そんな中、ディビジョンの代表である人物が言の葉党と繋がってると知られたらどう思われるかしら。

私たちはあなたの母親がきっかけであなたのお父さんと知り合っただけ。やましいことは無いけど、わざわざ言う必要のない事なのは分かるわね。」

優しげな顔から真面目な顔に切り替わった乙統女は少し怖かったけど、これがどれだけ大きなことかは四葉でも理解していた。

絶対に人に話さないことを約束し、四葉ら無花果と共に部屋を出る。

乙統女は寂しそうに「また、会えるのを楽しみにしてるわ」と背中を見送った。

乙統女はふうと溜息をつき、今はもう会うことも無くなった、実の息子に想いを馳せる。
四葉がいなくなり、あの子が出て行って、私は───。

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作者名:蒼依 | 作成日時:2022年12月11日 21時

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