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翌日。
試合当日の朝、4人は部屋で朝食をとり、スタジアムへと向かう。
出場チームは少し早くに招集され、待機する必要がある。その場には、娘といえど四葉は入ることが出来ない。
「いいか、何かあったらすぐ連絡しろよ」
「うん……頑張ってね!!」
関係者以外立ち入れない扉の前で3人と四葉は別れる。
扉が閉まり、父の姿が見えなくなってしまった。
ちゃんと、笑えてただろうか……。
震える体を押さえ込みグッと涙を堪える。
知らない場所に1人。
齢10歳の四葉にとってそれはひたすらに不安で、とても寂しさを感じさせるものだった。
お父さんはこれから大切な試合がある。邪魔をしたくない一心で、一生懸命笑顔で送り出した。
ポロポロと溢れる涙が抑えきれず、四葉はその場にしゃがみこんだ。
「あの……君、大丈夫……?」
突然声をかけられびっくりする。
「驚かせてしまってすまない。君、迷子かな?」
振り返るとそこにはキラキラと光り輝く銀色の長い髪を持った男の人がいた。
綺麗な髪に一瞬見とれるが、直ぐに父親の言葉を思い出す。
“「知らない人に声をかけられても絶対について行くんじゃないぞ」”
「えっと、あの……迷子では、ないです……」
「そうなのかい?泣いていたからてっきり。お父さんかお母さんはいるのかい?」
銀髪の男は優しい顔と声で話しかけてくる。それは思わず警戒心を緩めてしまいそうになるほど穏やかなものだった。
「お父さんは、今日の試合に出るから……もう中に……」
銀髪の男は四葉の後ろにある扉を見て納得する。
「今日はBuster Bros!!!とどついたれ本舗の試合だから……あぁ!どついたれ本舗の誰かがお父さんということか」
四葉は必死にうんうんと頷く。
「そうか、ならお父さんが行ってしまって、不安だよね。あ、自己紹介が遅れたけど、私は神宮寺寂雷。シンジュクディビジョン麻天狼のリーダーをしているんだけど、知ってるかい?」
四葉は、少し考えあっと思い出す。確かに前回の1stDRBで優勝していたチームにいた人と一致する。
きっと目の前の人が誰か思い出す余裕も無いくらい緊張していたのだろう。
「気づかなくてすみません…私、天谷奴四葉です。」
「あぁ、天谷奴零さんの娘さん」
少なくとも目の前にいる人物が危険ではないと分かり、ほっといきを着く。
涙は全て引っ込んでしまった。
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作者名:蒼依 | 作成日時:2022年12月11日 21時