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「こいつを紹介しておきたかったんだ。娘の四葉だ。
四葉、父さんの友達だ。挨拶しな。」
『は、初めまして…四葉です…』
おずおずと控えめな挨拶をする四葉という子供。見たところ小学生のようである。
「あぁ、よろしゅうな!俺は白膠木簓!簓でええで!一応芸人やってますぅ。」
「俺は躑躅森盧笙。四葉ちゃん、よろしくな。」
背の低い四葉の目線に合わせるようにしゃがんで挨拶をする2人をみて少し緊張がほぐれたのか、四葉は小さく微笑んだ。
「まぁ、玄関でってのもなんだし上がってけや」
「「おじゃましまーす」」
リビングに通されソファーへと腰を下ろす2人。
四葉は父親の手伝いをしようとキッチンに向かっていた。
少しして、お盆にコップをふたつ乗せた四葉が戻ってきた。
ありがとなと受け取るとニコッと笑い父親の元へと戻っていく。
「かわええなぁ」
「だろ?俺の自慢の娘だ」
ボソリと呟いた一人言に、返ってくると思ってなかった返事が返ってきて簓が飛び跳ねる。
き、キモイとか思われてへんよな…?と冷や汗をかいてるのを誤魔化すかのように話を続ける。
「いやほんまに!
四葉ちゃん、歳幾つなん?」
「えと……10歳です」
「10!?えっらい大人びてるなぁ!」
ということは小学四年生か…と頷くのは躑躅森盧笙。彼は高校の数学教師である。
簓の言う通り四葉は10歳にしては物静かで落ち着きのある子だった。
「俺がこんなんだからかもしれんが、あまり友達は多くない方でな。でも、頭がすごくいい。
四葉、今自分で勉強してる本、持っておいで」
こくりと頷き、自分の部屋にむかったのを確認すると盧笙がそっと口を開いた。
「あの、いきなりこんなこと聞くのはとても失礼やと思うんだが聞かせてくれ。あの子の母親は…」
「あぁ、あいつに母親は居ない。どこにいるのか、生きてるのか死んでるのか、それすらも分からない。でも、俺は会わせる気はないんでな。探してすらねぇ。」
「どうして…」
「あの女は心底可哀想な女だ。でも、アレはあの子にとって、いい母親には絶対なれねぇ。だから、俺一人で育てるって決めたんだ。」
重たい空気が広がる中に四葉が戻ってきた。
その手の中には…
「えっ、数学I !?」
数学Iとは主に大体の人が高校で習う数学の一つである。
そんな内容の本を10歳の子が持ち出してきたのだ。
そして、躑躅森盧笙の職業は高校数学教師。まさに専門分野であり、現時点で受け持ってる生徒に教えてる内容である。
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作者名:蒼依 | 作成日時:2022年12月11日 21時