20. ページ22
…
「……ベッドいこ」
ひかるの手をひいて、寝室に向かう。空いている方の
手で、ローテーブルのティラミスも道連れにしてやる。
「それ持って行ってどうするの？」
「……いーから」
三日月型のティラミスは枕の上に置いた。
ひかるの上の服を脱がし、ズボンを脱がし、ベッドの
下に落とすと、ひかるはお友達でも見送るような目で
それを見送った。
床に放ったベージュのズボンは、綺麗なメガネの形だ。
「……おれだけ？」
「ん、とりあえず」
ひかるは俺の服の裾をつまみ、小首をかしげて言った。
そのままでも十分、強引にそう思わされる仕草が憎い。
「……やぶ？」
落ち着いたふりでティラミスを引き寄せ、人差し指で
白い部分を掬って、指先にぽってり纏ったクリームを
ひかるに近づけた。
ひかるは両手で俺の肩を押し、帰りたいって顔をする。
「食べ物で遊んじゃだめ…」
「遊びじゃねぇから。俺は大真面目だよ」
パティシエの卵としての意地、罪悪感があるのだろう。
ひかるがのけぞって逃げるから、最後は押し倒す形に
なった。
枕に沈んだひかるを見下ろし、顔を近づけ、汗ばんだ
唇を "かぶ"る。歯を立てないようにふわふわ続けると
ひかるが、もっとしてほしい、と、黙って口を開いた。
「ぁっ…」
余韻もなく、ぷつん、と顔を離す。
半開きの唇を持て余したひかるが空気を食べるさまは、
このままでも十分、でも、もっとって思わせる仕草だ。
「俺がしたいことは何でもするんじゃねぇの？」
何もついていない指先で、首筋を下から上へなぞった。
ひかるはひとしきりピクピク、と敏感に反応したあと
生温かい吐息をほぉっと吐き出し、俺の頬に浴びせた。
「………する」
指先のクリームは体温で溶けて、少し柔らかくなって
しまっている。
さっき "下書き"した場所のスタート地点にクリームを
置いて、指をすべらせると、
ひかるがそっと、ここにどうぞ、と首筋を差し出した。
「ん…っ…あっ……」
どうせなら綺麗な方がいい。
俺はパティシエ気分でひかるの首にクリームを塗った。
それは流れ星みたいな軌道を描いて、耳に消えていく。
なんでこんなお遊びで、俺は興奮してしまうんだろう。
「あっ…ん…っ、！」
じんわり、ひかるの肌に馴染み始めていたクリームを
一気に舐め上げた。
耳の下でわざとらしくチュッ、とリップ音を鳴らして
手の甲で口元を拭う。
「…………甘、」
酒の匂いがボンッ、と口いっぱいに爆発して、その後、
甘いのが時間差で追いかけてくる。そういう味だった。
…
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なつな - 初めまして。いつも拝見させて頂いております。ひかるくんが可愛すぎて撃沈しました。何度読ませて頂いても、美しい世界にうっとりします。大好きです。これからも応援しております！！ (2021年6月27日 0時) (携帯から) (
レス) id: f6711a1d35 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ころねさん» やぶひかちゃんの可愛さに癒されてもらえて何よりです＊本編も可愛く切なく書いていきます*^^* (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» そういう切ない一面もありますよね…(; ;)けど、この頃にはふたりが薄っすら同じ未来を見始めているというか、ひかるくんもいい意味でふたりの終わりを見失っているのかなと、、結局ずーっと一緒にいちゃったねって言えますように＊その辺りも本編で＊ (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - hiさん» お久しぶりです(´ω`)コメント嬉しいです＊互いに振り回されたり振り回したり、それで結局愛を再確認したりして、ズブズブ抜け出せないふたりなのかな、と。ここまできたら微笑ましいです…(´ω`) (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - やぶひかちゃんかわいすぎました！本編も楽しみにしてます! (2020年1月25日 12時) (レス) id: cee1da3861 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年8月24日 22時
