＊ ページ35
…
ごわごわしたセーターがしぼんで、華奢なひかるの
骨格にあたるのがなんだか面白くて、何度も何度も
抱きしめ直しながら、お互い好き勝手にキスをした。
ベッドがいやに低いせいか、俺が前のめりなせいか、
ひかるの背中が後ろに
「あっ、んぅ…やぶ、あつい…っ」
「……じゃあ服脱げよ」
ピンポーーン＿＿。
「……誰だろ」
「いいじゃん出なくて…」
「どいてよもぉっ、」
「……ちぇっ」
ひかるはノゾキ穴を覗くこともなく、豪快にドアを
開けた。暖房でふやけた部屋に、冬の匂いと冷気が
流れ込んでくる。
「八乙女光さんですね？」
「……そう…ですけど…」
１人は紺色、１人はチャコールグレーのスーツ姿で
どちらも黒髪をポマードでギラギラ、と固めている。
「どちら様ですか？」
ドアノブを掴んで、ひかるの前に身体を差し込んだ。
ふたりの男の針みたいな視線が、顔に注がれて痛い。
「我々、△□署の者です」
「……警察？」
心臓に直接、氷を押し当てられたように、キン―と
冷たくなった。
ガラクタ入れの奥底にしまったはずの記憶が、影も
音もなく、目の前で、静かに、存在を主張している。
「先日逮捕された△〇さん、ご存知ですよね？」
「……え…」
「どういうご関係ですか？」
「……えっと、、」
捲し立てるような質問攻めに、ひかるの思考回路は
ショートしてしまったようだ。
そういう俺も、頭のなかのミキサーが鈍い機械音を
あげ始めている。
「これ、あなたですよね？」
ひかるが高級マンションであろう広いホールに立ち、
インターホンを押している写真だ。
あの毛皮のコートから白いふくらはぎが伸びている。
「お金を貰っていかがわしいことを？」
「っ、違います…っ」
「ちょっとっ、、急に来て失礼でしょ」
堪らず割って入った。相手はすかさず次の手に出る。
１歩後ろで静観していた強面の男が詰め寄ってきて、
ドアのフチを鷲掴み、地を這うような声で言うのだ。
会長さんから元官僚さんへのヤクの譲渡は月に１度。
あんたが部屋を訪ねる姿がカメラに映っていたのも
月に１度。それもちょうど、ヤクの譲渡が始まった
時期と重なってんだよ、って。
「あんたが報酬の運び人なんだろ？」
「っ、違うっ！！」
腹式呼吸。竹を割るような発声。
ひかるが放った舞台仕込みの声に、一瞬屈強な刑事
二人もひるんだらしく、寒々しい沈黙が流れていた。
ひかるを心底信じるに十分足りる、魂の叫びだった。
…
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しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ２人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ２人の人生に全力で拍手を送ります！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね＊残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…！！ (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます＊お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年7月27日 22時
