ねぇ、だれにも知られないで ＜yb×hk＞

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…



“女子と一緒じゃなきゃ行けないようなお店”
というリクエストにお答えして、
1度だけ大学の友達と女子会をしたイタリアンを予約した。



ヤオトメはお店に入ってすぐ、水槽の熱帯魚をのぞきこんで

魚を呼び寄せようとガラスをツンツンつついてみたり、
おれ水族館行ったことないんだよねーと口を尖らせたりと


お店の特別な雰囲気をひと通り楽しんだ。




八重歯のせいで舌っ足らずになるせいだけじゃない。

ヤオトメは大人に近づくにつれて、幼くなっていって

20歳と3日の今日はもうすっかり大きな子供みたいだった。




イタリアンだからおめかししなきゃ、と意気込んで
白シャツに紺色のカーディガンを羽織ったヤオトメは
見た目だけはちゃんと大人っぽい。




― それにしても、鞄が大きすぎやしないかい？




テーブルの下にどさっと置いた黒いボストンバッグは
がんばったら私1人くらい入れそうなほど大きい。



お、これめっちゃ女子っぽいね、と言って勝手に2人分頼まれた本日のカクテルを待っている間に、大きすぎる鞄から高級感のある黒いボックスが登場した。




ヤオトメがふんふんと小さく鼻歌を歌いながら
取っ手の下の鍵をガチャっと開く。



「じゃーーん！！」という派手な効果音付きで
ボックスの中身があらわになった。









「…………調理器具？」



私には名前も使い道もわからない大きなナイフや
ヘラのようなものが何本も並んでいたけれど
とりあえず、見覚えのある泡だて器を手に取った。



「そう！これプロが使うような本格的なやつだよ！
　やぶにお願いして買ってもらったんだぁー」



私は、製菓学校で使ってるやつがあるじゃん、と
ついケチくさいことを言ってしまって、
それを聞き逃さなかったヤオトメは
あれは練習用！と謎のヘラをぶんっと振りかざした。



「…ヤオトメのプレゼントって100パーリクエスト制だよね」



「やぶはね、俺の楽しみ奪うなよぉ〜って言うんだけど、
　おれがどうしても欲しいからお願い！って言うと
　結局くれちゃうんだよね！」


ヤオトメは、やぶはおれに甘いからねーと言って
口元に手を当ててくすくす笑った。



…

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