【弱虫ペダル】じゃんけんに負けました。【黒田雪成】

２０ポン ページ22

黒田side






自慢じゃないが、俺はそこそこモテる。


告白された数だってそこそこ多い。




…だから、







A「ドキドキしない。」






Aに言われたこの言葉は、若干。いやかなり。





「(ムカつく…。)」





べつにコイツに意識されたいとか思ってねぇよ。




けど、俺だって一応男だし。


そこらへんのプライドっつーものがある。








A「雪ちゃん？」


「…しゃあねーな。」






たぶん、その時たまたまなんかがブチ切れた。









A「きゃっ、」









最近流行ってんだろ、壁ドン。



女がドキドキすんならやってやろうじゃん。







A「ちょ、雪ちゃっ、」








1センチ、1センチ。


Aとの距離が近くなっていく。









「…ちょっと静かにしろって。」







学校に誰もいなくて助かった。



こんなこっぱずかしいことしてるところ見られたら生きてけねぇ。





ドンッて音を大げさに響かせれば、Aの肩は大げさにびくっと震えた。









A「あっ、」







閉鎖されてるみてぇ。



この空間、なんか異次元な気がする。







「(やっべ、…心臓うるせぇ。)」








なんで俺がドキドキしてんだよ。


落ち着けって、俺。









A「……。」







あと、数センチ。


唇がギリギリ触れる距離。







やべぇ、よくわかんねぇけどなんか理性がぶちぎれて。




「(歯止めきかなくなってきた。)」









A「雪ちゃん…、」






ギリギリのところでハッとしたように、Aが慌てて俺を見て腕をつかんだ。





その目が、なんか。


俺が予想してたのとだいぶ違くて。





まるで期待してたように、頬を赤く染めて。


口を半開きにさせて瞳を潤ませて。




俺の名前を呼んだ。









A「つ、付き合ってないのにそれは、…ダメだよ。」


「あ、」


A「きょ、今日は先に帰るね！」






するりと俺の腕の間をぬけて、俺の顔を見ようともしないで寮と反対側の方向に走って行った。







残像として残る、あの顔。


女の顔。









「っ、やっべ。惚れた…。」






どんどん自分の体温が上がっていくのを感じて、思わずその場でうずくまった。

２１ポン→←１９ポン

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す