白い祈り (ページ7)

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病院に幽霊って付きものでしょー？なんて口をかぱっと開けて笑ってくれたが。

『あ、奥邑さんだぁ…って眺めてました。そしたら時間忘れちゃって、ハッと気付いて回診に早く行かなきゃってなりまして。
丁度奥邑さんが手を振ってくれたところは見てなかったんです。ごめんなさい。』

不可抗力でもここは素直に謝っとこう。
自分がされたらきっと嫌な感じに見えるだろうし。

けど、奥邑さんは…

『………す、周芳野先生、可愛い！』

と身悶えして叫んだ。
サポートで入っていた看護士の千賀くんまで大口開けて《嘘でしょ？めっちゃ可愛いっ！》と笑い出す。

…いや、何故だ？

ハテナだらけの頭で奥邑さんを見つめると、今度は真っ赤な顔になる。

『そんなきょとん顔もズルいなぁ…。』

いやいや、何故あんたが照れる？

奥邑さんの代わりに、千賀くんがカルテを打ち込んでいたパソコンをパタンと閉じ、面白そうに名古屋弁混じりで解説してくれた。

『だって…周芳野先生、奥邑さんを時間忘れちゃうくらい見てたってことだがね。あ、お構いなく。俺は男女分け隔てなく恋に落ちるのはアリだと思いますから！』

………は？恋？？

『せ、せせせ千ちゃん！？そんな茶化し方しちゃダメだって！男同士でそんな言い方、先生が困るでしょ？俺、口効いてもらえなくなっちゃうよ。』
『いいじゃん！新しい恋すりゃええがね！！前の恋を忘れるにゃそれが１番。』

《千ちゃん》？《前の恋》？？

慌てふためいて千賀くんに首を振る奥邑さんと面白がってる千賀くんはどうも仲良さげだ。
ん？出会ってたった５日目の患者と看護士にしては打ち解けるのが早すぎないか？

『…奥邑さんと千賀くんはお知り合いなの？』

思わずそう訊ねると一瞬の間があった。

『…あ、まぁ、その…僕が勤めてた前の病院にちょこちょこ来てらして…。』

妙に口籠る千賀くんの言葉を断つように、奥邑さんは素早く口を挟む。

『俺、警察の事務職なんで、調書の確認とかでよくいろんな病院に行くんです。その時に…。』

書類に書いてあった《事務職》って警察関係の事務だったのか。
それにしても…。

『さ、先生次行きましょう。お騒がせしました〜。』

４人部屋のカーテンの中に声を掛けながら、千賀くんはそそくさとその場を離れようとする。

けれども、部屋を出る直前に俺は見てしまった。
謝るように片手を自分の顔の前に立てた千賀くんと、OKサインを出す奥邑さんを。

《前の恋》まで知っている知り合い…？