白い祈り (ページ8)

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それはもはや知り合いの域を超えてはいないか？
北山先生や藤ヶ谷先生、それから看護士の千賀くんとも繋がっている人間。
しかも此処は開設して３ヶ月の新しい病院だ。以前からの知り合いがスタッフに３人もいる患者とは。

ここへ来て、奥邑さんは急に謎めいた。
ひょっとして業者と関係が？
…あり得なくはない。

病室に取り囲まれたナースステーションに帰り、気になって奥邑さんのカルテを立ち上げた。

勤務先は…警視庁。

よく考えれば、警察関係者は警察病院に行くのが通常だ。ただし、警察病院も今は警察団体が運営しているというだけで民間病院と変わりない。昔は警察関係者なら窓口負担を支払わなくても良かったというが、今は一般と同じ基準になっている。
ならば家に近い場所、或いは知り合いの勤務する病院で診察を受けることもある。

これだけでは奥邑さんに何か秘密があるとは言えない…。

……《秘密》？？

気持ちを切り替える為に、ブルブルと頭を振って大きく伸びをしてみる。

俺は何を調べようとしてるの？
患者さんに秘密があるとしても、それが治療に関係しないことなら知る必要はない。
奥邑さんは治療に難を示したことはないし、周りに迷惑を掛けたこともないではないか。

その時、背後からミーティングしますと北山先生の声が聞こえてきた。
引き継ぎのメモを持って立ち上がり、奥の部屋へと移りながらもやっぱり奥邑さんのことが頭から離れなかった。

北山先生は今晩は夜勤……残ってさりげなく訊いてみようか。
…いやいやいや、今日は映画館に行くんだ。
せっかく早く帰れそうなのに、自ら余計なことに首を突っ込むのはどうなの？

『北山先生、５０８号室の奥邑純平さんなんですが…。』

で、結局無理矢理残ってる俺！
何やってんだよ！！

心の中で自分に悪態を吐きつつ、電子カルテに目を通している北山先生の横に椅子を移動させる。

『奥邑さん？何かあった？？』

北山先生はカルテから目を離すことなく、マイボトルに入ったプロテインを口に含んだ。
頭脳派でありながら、普段から《医者は体力！》と言い切るだけあって、しっかり身体の管理を怠らないのには頭が下がる。

病院で忙しなく走り回っているくせに、空き時間さえあれば駅前のジムに飛んでいきトレーニング、次の空き時間にはサウナへと走る。
３ヶ月前にこちらに来てからというもの、何度か付き合わされたが、とんでもない体力を維持するにはとんでもなく疲れることだけは分かった。