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あれから何年か経た後に、また彼女の死に新しい切り口で触れる日が来ようとは思わなかったけれど。


やがて、椅子に座り直した奥邑さんが、呟くように訊ねた。

『これがあんたの言う《救い》なのか?秘めていた罪を引き摺り出してほしかったのか??』

『………そう。僕だけの判断では…誰かの目で見てもらいたかった。同じ医師の視点が欲しかった。けど、どうしても僕の口からは誰にも言えなくて…これでハッキリした。

教えて下さい。僕はこれからどうすればいい?どうすればこの罪を償える?丸投げするようで悪いが…もうおかしくなりそうだったんだ。
……………頼むから、助けてください。』


やっと顔を上げた鹿島先生は、迷子の幼子のように俺たちを見る。
これまでずっと悩んでいたのだろう。自分に罰を与えたくて。

罰を与えられれば納得するというなら、与えればいい。


『鹿島先生、俺が相原さんと約束したことがあります。循環器内科の医師になろうとしたきっかけのひとつです。良ければ、あなたもご一緒にこの約束を果たして下さい。同じ人の苦しみを知っている俺たちだからこそできることかもしれません。』

『……約束?』

『《この病気の治療法を見つけること》です。重症の心筋症患者さんが笑顔を取り戻せる術を見つけるんです。
心臓の再生医療はIPS細胞の開発により更に特段に進化してきました。心筋細胞を1度に多く培養できるようになり、心筋細胞シートの移植による症例も増えて、心臓移植に頼らないひとつの治療ルートが築かれつつある。
安く安全な治療ルートをいくつか提示できるようになれば……。

鹿島先生も一緒に探しませんか?

相原さんに償いたいと仰るなら…きっと相原さんも本当は僕より鹿島先生にその約束を叶えてほしいと思っていたはずです。

相原さんは事務所がクラウドファンディングで得た資金を子どもの移植基金に寄付をされました。
多分それは、鹿島先生が小児科に足繁く通っていたから。重症心臓病を患う子どもたちの治療に熱心に取り組んでらしたのを見ていたからではないでしょうか。』


鹿島先生よりも先に奥邑さんが頷いた。

『…きっとそうだね。さっき、《お互いに夢を追う為に別れた》って言ってたけど、本当はあんたに託したい約束だったのかもな。
妹さんの病気で大変さは分かっていただろうし、鹿島さんみたいな医師が増えてほしいと思ったんだろう。だから、あんたに熱意の方向性が似てる周芳野先生に心開いたんだ。』

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作者名:みあん | 作成日時:2023年2月26日 1時

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