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『調べた…?あ、あの、全く話が見えないんですけど…まずあなたは何者さんなんですか??』
『あ、そか。コレ…。』
差し出してきたのは写真入りの身分証。
奥邑さんの胸から上の写真だ。警察官らしき制服に身を包んでいる。
『で、こちらに部署が書いてありまして…捜査二課に所属しております奥邑純平です。改めてよろしくお願いします。』
『捜査二課ぁ?事務職じゃないんですか!?』
素っ頓狂な声を上げちゃったのは許してほしい。
だって全然頭になかった言葉が出てきたもんだから仕方がない。
『…シィッ!相談室でも声は漏れますから、なるべく声は抑えて…まぁ、事務職みたいな感じなんで完全に嘘ではないんすよ?二課は帳簿や書類をチェックするのがお仕事なんで。はい、座って座って。』
思わず口を押さえようとして、両手がコーヒーで埋まっていることを思い出す。
『あ…コレ、どうぞ。』
『ありがと!先生はミルク入りなんすね。』
『ま、まだブラックの美味しさが分かんなくて。』
『いやいや、本当はミルクとお砂糖入れると脳にはいいらしいですから。香りと糖分で頭を活性化させてミルクで胃を守る…理に適った飲み方なんですって!』
ふんわりと微笑むその人は、冷たくて黒い液体が入ったコップを両手で受け取りひと口。
息からは独特の香ばしい香りが立ち上る。
『美味しい。横尾さんってコーヒー飲まないのに上手に淹れてらっしゃいますよね〜。いいなぁ。
あ、俺もね、余裕ある朝は自分で豆から挽いて飲むんです。香りが全く違うんすよ?でも、ほとんどそんな朝はないんで大抵コンビニかコーヒーショップで買ったコーヒーなんですけど!』
楽しそうにコーヒーについて話す奥邑さんに少しホッとした。
刑事と聞いて畏まる俺をリラックスさせようとしてくれている…そう感じて。
……この人は信用してもいい人だよね?
自分にそう問いかける。
心は奥邑さんに惹かれている。その魅力的な笑顔と声と優しい対応がじんわり心に沁み込んでくる。
なのに、あと1割のところで何かが奥邑さんを拒むのだ。
それが《警察官》という職業への思い込みのせいなら申し訳ないな。
『さて…コーヒーのお話もしたいんですが、それはまたゆっくりするとしてぇ…えと。何から話そうかな?まずは北やん…北山先生と俺の関係かな。彼とは趣味のフットサルで同じチームなんです。お互い高校の同級生の紹介で入ったんで知らない者同士でしたが、何故だか気が合う相手っちゅうか。』
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作者名:みあん | 作成日時:2023年2月26日 1時