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奥邑さんの声は優しい響きを取り戻していた。

しばらくして、北山先生がナースステーションに戻り他の看護士や医師と軽く挨拶をしている隙に、俺と奥邑さんはそっと相談室に移動した。


相談室は2部屋あるが所謂医師と患者、患者の家族との話し合いの部屋だ。
大抵は病状説明や治療方針の説明で使用されるのでコンピュータも置いている。5人ほど入ればいっぱいになるほどの小さな部屋だが、中から鍵も掛かるし外から見えないように廊下側の窓もなく、正にこんな秘密の捜査には持ってこいの部屋だ。


『…僕は何をすればいいですか?』

そう訊ねると、ディスプレイの前に座った奥邑さんは北山先生のパスワードを打ち込み、慣れた手付きでとあるリストを出してプリントを始める。

『さっき北やんに見せてたリスト。周芳野先生にも見せますね〜。何か気付いたら教えて下さい。
………北やんがね、周芳野先生にも協力してもらおうって言ってたのは《周芳野先生はカルテを読む天才だから》って。患者の顔を読むのも天才って言ってたなぁ。
俺だけじゃ気付けないことを周芳野先生なら気付けるかもしれない。』

『えっ!?そ、そんなことないっすよ!ただカルテに書いてあることを繋ぎ合わせて想像すると、分からなかったことにカチリと嵌まる時があって。天才なんかじゃないです。』


というか、俺がこのお仕事で唯一得意なことか。
《患者に寄り添いすぎる》という言葉がまた甦るが、これも武器にできるのが内科の仕事でもある。


『俺たちと同じだね〜。俺たち捜査二課ってね、詐欺とか不正とかの犯罪担当で、書類と切っても切り離せない課なんです。
担当する事件にも寄るけど、大抵は何日も徹夜でコーヒー片手にコンピュータや書類と睨めっこしてパズルしてるの。整合性の取れない箇所や取れる箇所を探して探して探して探して……。
おかげで目が悪くなるの早くてさ、最近眼鏡買っちゃった!』

奥邑さんがシャツの胸ポケットから黒縁の眼鏡を出して掛けてみせた。

捜査二課の仕事ってそんなに地道なお仕事なんだ?
TVドラマじゃ捜査一課は殺人事件の捜査で派手なイメージだったけど、そう言えば二課って聞いたことなかった。


『分かります。俺も視力落ちてきたな〜って。
まぁ、息抜きにゲームばっかりしてるせいもあるんですけど。』
『ほんと?……じゃあ、今度一緒に眼鏡買いに行きませんか??』

嬉しそうに目が輝く。まるで子どもみたいだ。
なんてくるくる表情が変わる人なんだろ。

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作者名:みあん | 作成日時:2023年2月26日 1時

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