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お空も暗くなってきて、紫がかった夜の色が向こうからぼんやりと忍んでくる。
畑の真ん中にはかぼちゃくらいの大きさの穴がポッカリ空いていて、こちら側にはみんなが担当を決めて蒔いたお野菜たちの種の芽がびにるのお屋根の下でぴょこぴょこお顔を出してます。
ツチノコさんがお野菜の下で穴を掘らないように、周りには背の低いべにや板を土に挿し込んでるの。
お野菜楽しみ〜!僕は食べないけど〜。


で、そんな春の夕方の風にふわりと長いすかあとをくゆらせたトシコさんは訝しげにタマさんを見た。

『さて、何を思い出したのだえ?』

『……俺がこのひとくふう荘で初めて出会ったアヤカシってさ、厳密に言えばキツネっちだったんだろうけど〜。初めて俺自身が体感したアヤカシとの出会いってさぁ…。』

『ああ、タヌキチ?』

『そ。さっきキツネっち、タヌキチは畑に置いてきたって言ってなかった?』

『ああ、言ったよ。ほれ、ツチ媛様の出入り口の穴のそばに埋め………お前、まさか?』


畑の真ん中に空いた穴のそばに半分埋まっている酒徳利を指差したトシコさんは、はたとタマさんを振り返る。


『まさか、信楽焼を式神にするのかえ!?』

『ぅええぇぇっ?だってタヌキチはタマに取り憑いて…。』


タマさんはにぃっと笑ってみせる。


『これも《出会い》でしょ?』


……で、《出会い》〜??
お世辞にも良い《出会い》とは思えないけど!
だってタヌキチはタマさんに取り憑いてボウインボウショクシュチニクリンしようと目論んだツクモガミさん。
お仲間になってもらおうものなら、一体何を要求されるか!?


『欲望追求してたのは違うアヤカシだったんだよね?タヌキチに取り憑いてた豆狸。ってことは、信楽焼のタヌキチ自身はまだいい子か悪い子か分かんないんだよね??
タヌキチは豆狸がその力に目を付けて取り憑きたくなるくらい妖力の強い子なんだし。協力者になってくれたらきっと強い味方になるよね?』

『……ああ…なるほど。』

『だから話してみたい。話してみないと分かんないもん。キツネっち、通訳お願いします。』


これはなるほどとしか言えません。
流石タマさん。思考回路が異次元です。

トシコさんも腕組みしてう〜むとひと唸り。

『ふむ。あの戦いを見るに、憑依や変化は信楽焼の力だったようだものねぇ。ミヤタを殴り飛ばすほどの怪力でもある。
…まあ案ずるより産むが易しだ。ダメならツチ媛様に再び封じてもらえば良い。やってみようかぇ。』

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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時

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