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そう言ってトシコさんはずんずんと畑の中へ入っていった。
タマさんとミヤタさんもトシコさんの後に続く。
『タマ、おじさんに来てもらわなくていいの?』
ミヤタさんがタマさんに優しいお声で訊いた。
『………ちょっと今は顔見ると余計なこと言っちゃいそうだから。』
『龍さんがあのこと話しちゃったからか…ごめん。』
『なんで謝んの?教えてもらって助かったよ。てか、宮っちはどこまで知ってんの??』
僕もタマさんの足許を歩きながら、また分かんないことが噴き出してきちゃう。
……《あのこと》ってなぁに?
『龍さんの記憶の残像は時々頭の中でフラッシュバックすることはあるけど、龍さんが口にしたことしか分かんないよ。龍さんも結局は宮田.俊哉だしね。俺の思考は共通だけど、龍さんの記憶の感じることや知ってることは分かんねー。
だから俺はあのこと聞いてびっくりした。タマは…かなりショックだっただろうなと思って。』
タマさんが少し哀しそうなお声になった。
『ばあちゃん…じいちゃんより超元気なくらいだったから、俺たちもあの時はびっくりした。だから…まぁ、龍さんの話、納得しちゃったんだよなぁ。
じいちゃんにちゃんと聞かないと分かんないけど、みんなの前じゃ流石に訊きにくいから後で……あっ!!』
タマさんは急に立ち止まり、とてとてついて歩いていた僕を振り返る。
『じいちゃんにドンブリの話聞いてから来れば良かったっ!ガッデム!!』
『どんな話まで進んでたの??』
『じいちゃんと式神さんたちの出会いからお仲間になる交換条件まで。そこでタヌキチのこと思い出してさ。キツネっちがいる間に交渉に入りたくて。話は早いほうがいいべ?』
ミヤタさんも僕のお顔を見て溜め息をついた。
『ドンブリだってドンブリのものだからね?飼われている動物は、どうしたって飼い主の都合で生き方左右されるのは仕方ないけど。《たま》とドンブリの向き合い方は早く考えてあげたいよな。』
…………ミヤタさん、ありがと。
『…では、封印を解くよ?少し下がっていておくれ。ツチ媛様…狸を外に出して少し話します。暴れ出したらお手伝い宜しゅう。』
トシコさんは徳利の前にしゃがみ込み、蓋に手をかける。
穴からは、ツチヒメさんもひょこんと三角形の頭を出して見守る。
『おや。瘴気が消えている…やはり豆狸の瘴気に侵されていたようだねぇ?』
さっきは全く開かなかった蓋が簡単にポンっと軽い音を立てて開いた。
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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時