ひとくふう荘14 (ページ11)

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ミヤタさんが明らかに表情を硬くする。
みんなもハッとしてミヤタさんのお顔を見た。

『あんさんに何かあれば、それはすなわち宮田くんに何かあるということやでな。宮田くんを裕太から奪わんといてほしい。』

『…俊哉が、望んでいるとしても？』

ミヤタさんのお声がとても静かにお部屋に響いた。

『古狸に裕太が倒された時、コイツは俺に言った。この身体を明け渡してもいい、裕太を救ってくれと。そして気付いたら俺が表になっていた。

仰る通り、俺はただの記憶だ。この人間に溶け込んだただの素材だ。俺自身に自我などなかったよ。この前、河原で思い出したくらいさ。

つまり、俺が表に出てくるのはどうやら俊哉の意志らしい。誰かを救いたいのに自分じゃどうにもならない…それなら自分の中に在る龍に人生全て渡してでも救いたいってな。』

ああ…ミヤタさんたら…！

みんな言葉が出ないみたい。かろうじて、キタヤマさんのちっちゃな呟きが聞こえた。

『宮っちなら…。』

…そう、ミヤタさんならあり得ます。
タマさんを守る為にご自分はいくらケガしてもいい方だもの。タマさんの為なら、そしてご自分を愛してくれる人たちの為なら…。

『宮田くんが望んでいるとしても。逆にあんたが止めてくれへんか？
俺はな、《たま護り》の為に誰ぞが命を落とすなんぞもうたくさんや。そんなんしたかて何の得にもならん。

……俺の親父もそうやった。そん時は人間が相手やったが《たま》飲み込んで行方知れずになってな。結局は《たま》の力の片鱗を使われてしもた。最期は……俺の目の前で跡形も残らんほどに消された。

１人では無理なんや。俺とじいちゃんは痛感したよ？《たま》の力が大きすぎる。いっぺん力が漏れ出したら普通には隠せへん。』

リュウさんは答えない。
衝撃的な昔のお話にたじろぐみんなの中でも、ガヤさんが一層険しいお目目になる。

『俺たちのひいじいちゃん…病死って聞いてたけど…お骨もねーのかよ。
……《たま護り》ってそんなに厳しい役目なの？そんな仕事をタマに…いや、タマと俺はともかく、キタヤマたちに手伝わせていいの？？』

きっと最後の呟きはご自分に問いかけるお言葉。
キタヤマさんたちはお父さんのご家族じゃないものね？
みんなを危ない目に遭わせたくない…大切な人たちだからこそ。

だけどその時、黙って聞いてたタマさんがお口を開いた。

『………俺、宮田さんがそばにいてくれるなら《たま護り》継ぐって言ったの。』