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お父さんは短いお時間の中でたくさんのことを伝えようと、一所懸命お話してる。

しばらくして、メモを取っていたセンガさんがふと気付いてお父さんに進言した。

『……おじさん、木の手入れは中で聞かせてください。そろそろ風が出てきたし。ツチノコさんは…中に入れます?』

『ああ、そやな。
…ツチ媛はん、いつもおおきに。あんさんのおかげで俺は此処を離れても不安やなかった……次にいつ会えるとは約束でけんけど…良ければこの子らのこともよろしく頼んます。』


頭を下げるお父さん。
ツチノコさんはお膝の上でまたしばらくお父さんを見つめて。
それからひょいと土の上に飛び降りた。

『《わらわも約束は嫌いだ。だからこの先のことの約束などはせぬ。子守りが嫌になれば好きに出て行くが……此奴らとの駆けくらべは楽しい。楽しい間は此処にいる》…だそうです。』

クラタさんが優しいお顔でお父さんを見る。


『《だから、お前もまだ楽しめ。次の世の為にも多くの美しき記憶を残さねばならぬのだろうが。楽しまずして美しき記憶など残らぬぞ》…。』


ツチノコさんの細い舌がぴろぴろしてる。金色のお目目には優しい翳り。小さなお鼻の穴。均等に並べられたツルツルサラサラの鱗は彼女が息をする度に柔らかに光る。

……美しいヘビさん。つんでれさえもお美しい。


『ツチ媛……いつか、俺があんさんを愛した記憶に出会ったら、また優しいしたってな?』

『《…おい。わらわに2度と会わぬ気満々ではないか?なんならお前の居る場所に通ってやろうか》…だそうです。ふふふ…可愛いなぁ、ツチ媛様。』

『いやいや、まだまだ先の話ですやん!明日またココ来ますよって。大体、ホームにツチ媛はん来たら周りの年寄りひっくり返るさかい勘弁して〜。』


お父さんが頭を掻きながらそう笑うと、ツチノコさんはふいっとお身体を返して畑の中へとうねうね帰っていった。

『あっ!よ、よろしくお願いしまーすっ!』

慌ててキタヤマさんが追いかけたけど、やっぱりその速さはとても追いつけないほどだった。


…………可愛いひと。
これからもよろしくね、ツチヒメさん!!




それから、みんなでツチノコさんについてワイワイお話しながらおうちに帰ると、そこにはミヤタさんとタマさんが待っていた。

あ、ミヤタさん、お首に首輪付けたまま。
まだリュウさんみたいだね。


『おかえりのすけ〜。ごめ〜ん!俺気絶しちゃってたんだって?今、龍さんに聞いてたとこ。』

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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時

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