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仏様のお慈悲ってなぁに??

『《抜苦与楽》、仏の慈悲とはただの憐れみではなく《苦しみを取り除き楽にする》ことを言う。全ての人間、生きるものに遍く与えられる永久に変わらぬ愛。』


トシコさんがお花の檻の向こうで呟いた。
お父さんはそれはまるでお花が柔らかにほころぶようなお顔で笑う。


『そうか…せやなぁ?苦しかったなぁ。さぁ、出ておいで。』


マメダさんがおずおずと前に足を踏み出した。


『ここにおいで。』


お父さんがご自分のお膝をぽんぽんと叩いてみせる。

『俺は人間や。神でも仏でもない。なんで《たま護り》が人間に委ねられたんか分かるか?人間は1人では何もでけへん。不思議な力を自分で生み出すこともない。せやからこそ、分かることがある。
あんたの哀しみも苦しみも俺には理解できひんけど共感はできんねや。《たま》に込められる力は陽の力だけやない。陰を知らねば陽の輝きを知ることはできんのや。人間は陰と陽合わせて飲み下して生きる者。
あんたの陰は俺が引き受けちゃる。ほんまは仏さんがしたいとこやろが、仏さんはこんなとこに来られへんから、俺が代わりに抱き締めちゃろ。おいで。』

マメダさんはそれを聞いて、いきなり四つん這いになり、走り出した。
それからいつも僕がするように、お父さんのお膝に飛び乗ってそのお胸に頭をぐりぐり擦り付ける。

《……自分の全てを懸けて挑んだ行を…南無阿弥陀仏…私は欲を捨てきれなかった。生きる欲を。》

お父さんがそっとマメダさんを抱っこして、頭をナデナデ。

『ええんや。その苦しみを味わうこともこうして救われる喜びを知ることも、また仏の道を知る別の行やもしらん。生きることは喰うこと。あんたはそれを知った。
生きる欲を貪るように味わうことは悪いことやない。ただ、その欲の陰で誰か慈悲を欲する者がおらんか、再び負けるのを怖がって考えないようにしとったことがあんたの本当の失敗かもなぁ。』


マメダさんのぎゅうっと閉じたお目目からお水が流れ出した。
それは灰色ではなく、綺麗な透き通ったお水だった。


《…あなたは温かい。これが【たま】の温かさなのですね。あの方たちが欲しがる気持ちも分かりました。》

『あの方たち…。』

《私を此処へ導いた者です。その名は敢えて語りますまい。彼らもまた挫折を知り己に1度は負けた者。誰かに負けたことに縋りつき、我を通して生きる力を搾り出している。》


お父さんの心臓の音を聞きながら、彼はお耳を横に垂れる。

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作者名:みあん | 作成日時:2022年11月27日 0時

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