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この状態…ロバさんも痛いのかしら。申し訳ないことしちゃった。
僕がひとりごちると、モモさんが振り向く。
『いや、あのままマメダに吸い尽くされるよりはマシよの。まぁ、とは言うても龍馬は曲がりなりにも霊獣だのと呼ばれる男よ。特に馬力はひと一倍だし、最初はそこまで心配はしとらんかった。ところが、どうにも此奴がしつこく口から出さんので、そろそろ他の者も呼ばねばならぬと思っていたのよ。
お前は龍馬の命の恩人よのう。いや、恩犬かよ。』
その時…まるで地鳴りのような低い低い吐息が空気を震わせた。
見れば、ビクビク蠢いていたロバさんがギクシャクと立ち上がり、片手を固く握り締めている。
宙を睨み付けピカピカに光るお目目…赤い瞳?
痛みで疲れきったお身体はただ怒りに満ちて、もはや神々しくも美しい。
そして、そのお身体からじわじわ立ち昇る赤いもやもやは鮮烈に辺りを埋め尽くしていく。
『…ぅらぁぁぁあっ!!俺に憑こうなんて5万光年早ぇっ!!!』
ボッというおっきな音に思わず僕は後退る。
赤いもやもやが一斉に炎と化した。
………コレは、ロバさんの感情??
強くお顔を顰めたロバさんが勢いよく開いたお手手の指先からは、とろぉりと滴る灰色の液体。
それはゆっくりと下に向かって線を描いて落ち、やがてちっちゃな水溜りになり、ぷるぷると震え出す。
『去ねっ!!』
ロバさんが怒りに任せてガンッと足で踏み付ける。と、ねばねばした灰色の液体は四方八方に飛び散った。
『あ、馬鹿!マメダは散らすな!!』
ヤギさんがそう叫んだ瞬間…またもや僕たちはびっくり!
なんと、飛び散った液体の雫がむくむくと質量を増していく?すぐさまヤギさんはいくつかぐぐっと踏み付けたけど、勿論追いつかない。
やがてお花の檻の中はむくむくと膨らんだ灰色のマメダヌキさんたちでいっぱいになった。
『…もぉぉぉおおっ!ロバの馬鹿たれーっ!!!』
普通のタヌキさんの半分くらいのさいずでも、これだけ数がいれば圧巻ですぅぅぅ!!
分裂増殖したマメダヌキさんたちは、次から次へとお花の檻の中で跳ねる弾丸のように飛び回り、ロバさん、ヤギさん、モモさん、それからお父さんへと飛び掛かってくる。
…お父さん、危ないっ!!
何匹かのマメダさんがお父さん目掛けまっしぐら!
無意識にまた僕のお身体が動いた。飛び出していく僕の首輪をタマさんが咄嗟に掴む。
『ドンブリ!』
気付いた時にはさざめくお花が目の前まで来ていて…。
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作者名:みあん | 作成日時:2022年11月27日 0時