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少し呼吸が穏やかになっていた気はするけれど…無事に復帰してもらえるよう、みんなが祈っていた。


『……チーフも救急車に乗らないと!』

若月さんがそっと声を掛けてくる。
事件だから病院で診断書書いてもらわなきゃいけないんだろうけど…。

『いや、後から自分で病院行ってきます。報告やら連絡やら何やらあるし…。』


到着後、CAは入口でお見送りしながら立ち止まらずに外へ出ていただくよう促したり、忘れ物や座席に異物がないか調べて回ったり…今回はあちらこちらに事件の報告したりもしなきゃいけないし…あ、できれば今からブリーフィングもしたい!
報告するにも嶺岸さんの人質の件はさっぱり分かってないもん。それに、日本に帰ったら俺たちにも事情聴取があるってキタヤマさんが言ってたから、みんなであったことを把握して〜……。


…とか思っていたら、ファーストクラスのあの男性に声を掛けられる。

『You、いいフライトだったね。』

『…ありがとうございます。ご迷惑をお掛けしました。ご搭乗、ご協力ありがとうございました…。』


笑顔で答えた…つもりだった。
クラクラと世界が揺れた。


……あっれ〜?飛行機、動き出した??


次に気が付いた時には、俺はバンコク市内の救急病院の病室の中にいた。





妙にお腹減ったな〜……。


目覚めて最初の感想はそれだ。

そういえば…鞍田くんとご飯…何処がいいかなぁ。
バンコクは美味しいとこいっぱいあるし、屋台から高級フレンチまでよりどりみどり。俺だけじゃ選べねーぜ。

えと。帰りの便は何時だっけ?
流石に深夜すぎるから明日お昼を一緒に食べて〜、また日本で夜ご飯食べようって約束してもいいよな?自然な流れだよね?
いや待てよ?鞍田くんは移行訓練中だし、やっぱりうちで出前…いや、俺がお持ち帰りはダメ。

……ん。仕事も恋も確認作業が大事だ!
さりげな〜く彼女の有無とか、《もう恋してます》の真意とか確認して…。


『……ご飯…。』

そうひとりごちると、急に目の前に鞍田くんが顔を出した。

『…おお?』

『遼さん!!目が覚めました?!…ちょ、ちょっとナースさん呼びますねっ。』


それから看護士が来て、体温や血圧、血中酸素などのバイタルを確認。痛む箇所はないかと訊かれて、全身が重怠い痛みに覆われていることをようやく自覚した。
そして、機内で倒れて結局救急搬送されたことも知る。


………やっちゃった。
やっぱ俺って《イトオシイCA》じゃん。もぉっ!

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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