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『…ん?待って。まさか、その情報の代わりに俺のこと…。』
『ムフフフフフフフフっ。だってコミュニケーションに《共通の話題》は必須ですからね!』

アイタタタ。合コンの話題か。そりゃ他部署にも広まるわ。

『各部署の変なあだ名暴露大会?』
『各部署の面白い人暴露大会です。』
『おいっ。』
『チーフのエピは鉄板でウケるんです。いつもありがとうございまーす!』

《いつも》《鉄板》??
この子だけでもかなりの人数に広めてんのかーい!
…はぁ。次の査定に響きませんように。


しかし、ナナハチへの移行訓練中か。
旅客機の中でもジャンボジェットとなる1番大きな機体だ。たくさんの人を乗せて遠くまで飛べる機体。
つまりはそれだけ更なる完璧を要求される。


同じくキャリーを持って立ち去る操縦士を見送っている、その肩と腰の細い線がやけに気になった。
普通なら美しいスタイルって褒めるとこだけど、知力体力判断力が資本の操縦士としては細すぎる気も…。
この訓練でげっそり痩せる人も多いっていうよなぁ。大変なんだろうなぁ。


安全でなければならない飛行機…機体や天候、航路、時間、様々な角度から安全を図り飛ぶ乗り物。だが、最後の安全を担うのはどうしたって操縦士の判断と腕になる。
だからこそ操縦士は過酷な訓練や身体検査をクリアした者だけがなれる特別な仕事。簡単なことじゃない。努力だけでも成り立たない。努力をしても報われないこともある。

全てに打ち勝ち、1人で飛ぶのではないと心に刻める人、スタッフやお客様全ての思いを背負える人間があのコックピットに座れるのだ。


……ん。負けないでほしいな。
移行訓練は身体的にも精神的にも追い込まれる。
それでも乗り越えてほしい。
俺の夢も君たちに託してるんだからね。
まぁ勝手にだけど。



『…お疲れ様です。』

すれ違う時に挨拶すると、彼は驚いたように振り返る。

『あっ、お疲れ様です…。』

あれ?なんだか…前から知っている気がする。
歳は少し下くらいかな??愛嬌のあるハンサムだ。
………いやはや可愛いじゃねーか、このヤロ。

んふふ。思わず俺の夢や思いを込めて話し掛けちゃう。


『お互いいいフライトにしましょう!』


サムズアップしてみせると、彼も戸惑いながら親指を上げた。

『………はい!』

おっ、いい笑顔!

…ん。きっといつか何処かのラインで彼と一緒に空を飛ぶ日が来る。
いいフライトにする為にこの人と力を合わせる時がくる。
そんな予感がした。

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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