ひとくふう荘 10 (ページ26)

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タマさんのお目目からポロポロポロン。溜まってたお水が落ちてきて、僕のお顔がびちょびちょになっちゃう〜！

…ったくもぉ！タマさんたら泣き虫さん。
僕より先にタマさんが泣いちゃったら、僕が泣くヒマありませんよ？死んじゃうかもしれないのは僕なのにね？？

僕はいつもネコタマさんやミヤタさんがするみたいに、大好きな人の涙を拭ってあげたくて。
そうっと立ち上がって、タマさんのほっぺをペロペロペロン。

『……ドンブリ。舐めてくれるの？』

『大好きだよって…ドンブリも大好きな人が哀しむ顔は見たくないんだよ、』

ミヤタさんが、持っていたお湯呑みをおこたつの上に置きながら代弁してくれた。
それからティッシュの箱をタマさんの前に置いて、僕と反対側のほっぺを優しく拭いてあげる。

『鼻から水出てるぞぉ？』
『……ん。』

ミヤタさんの持ってるティッシュにお鼻を擦り付けびぃぃんっとお鼻かんで、そのまままた涙をポロポロしながら、タマさんは僕を抱っこしてほっぺを僕のおでこにすりすりして、ちゅっとまぶたにお口ぺたりしてくれた。

『……今すぐに、という話ではないのだよ、タマモリ。お前の祖父は彼の寿命が尽きる時に《たま》に魂を移すつもりだったのかもしれない。
そうでなければ、こんなに美しい命に育てるなどできはしないさ。神様が選んだ魂ではあるけれど、吾妹子とて偽の愛ならば分かるのだ。お前の祖父はまことの愛を注いだのだ。

だからこそ、お前にもこの話はしなかったのではないかえ？できるならこの子の命尽きる日まで、ただ幸せに生きてほしいと。何にも惑わされることなく、ただこの子を愛してほしいと。そう願っているのだよ、彼は。』

『……ほんと？』

トシコさんはゆっくりお部屋を見回した。
まるで、ココでの僕とお父さんの《愛した記憶》を見るように。

『私は彼ではないから断言はしないが、お前のほうが祖父を知っているね？』

『…ん。じいちゃんは平気でそんなことできない人だと思う。』

ガヤさんもそのお言葉に頷く。

『俺もそう思うよ。死なせる為ならドンブリをあんなに愛せない。きっと他の方法を模索しているんだ。だからまだ《たま護り》の代替わりをしないんじゃないか？自分の手でなんとかしたいんだ。』

『そう、それだ。』

キタヤマさんも頷いて笑ってみせた。

『ここを離れたのは、もし《たま護り》が自分だと気付かれてもここに《たま》はないと思わせる為…しかもドンブリ守る為でもあるんじゃね？』