ひとくふう荘 (ページ27)

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荷物たくさんだなぁ。ミヤタさんが後ろでダンボール箱やおっきなカバンを車からせっせと運んでる。

『丁度できるとこ。お前らのも作ってるから試食して〜。』

タマさんはあるこおるがいっぱい付いたお手手をひらひらさせて、ミヤタさんを呼んだ。

『勿論っ！ミヤ〜、ご飯の前に冷蔵庫に入れるのだけ先に入れちゃわない？』

ただいまっと手を上げながら入ってきた汗だくのミヤタさんが、あるこおるをプシュ。

思わずくんくんしちゃう。この匂い、最初は嫌いだったけど慣れちゃった。
タマさんがある時からちょっとだけみんとおいるを入れてくれたの。お父さんが虫除けに使ってたから、匂い嗅ぐと懐かしくてちょっと嬉しいの

『……何？ドンブリ。消毒液の匂い？』
『薄荷油入れてるから、じいちゃん思い出すんだよね？』
『俺、全然分かんないな。』
『千ちゃんはコロナの後遺症？？』
『かなり良くなったんだけどね、身体の動きや倦怠感も鼻も……でも、大丈夫！生きるのに支障ないくらいだし。みんなが分かってくれてるから。』

ちょっとだけ、みんながしんみりしちゃった。

『……ミントか…。』

ヨコオさんは別のことも考えてるみたい。そのままお外へ走って出て行っちゃった。

『ところでさ、試食会の前に…タマと宮っちに話しといていい？』
『終わってからにしようよ。』
『……いやいやいやいや、そんなこと言われて普通にご飯味わえる訳ないじゃん。先に言ってよ。』

慌てて冷蔵庫を閉めたタマさん。ミヤタさんは差し出していた冷凍用のご飯の材料を見つめて、タマさんの代わりに冷蔵庫をまた開けた。ひとりでせっせと冷蔵庫に物を入れていく。
タマさんはといえば、椅子に座ってキタヤマさんに詰め寄っています。

『ミツ、言わないとミツの無防備な写真ばっかり隠し撮りして、小学校の北山先生ファンクラブのサイトに流す！！』
『えっ！？そんなのあんの？？』
『あ、本人には黙ってたのに。』

どうやらタマさんたちのことより衝撃を受けているキタヤマさんの代わりに、ガヤさんが苦笑いで話し出した。

『俺たち、ここを出ようかなって思ってる。』
『はぁっ！？』

今だに衝撃を受け止めきれてないキタヤマさんの隣で、今度はタマさんがものすごく衝撃を受けたみたい。

『いや、仕事がさ、みんな忙しいから家事の分担とか難しいし…。』
『今まで上手くやってたのにっ？』

ガヤさんの考えた言い訳はタマさんには通じないよぉ。