アシタ×ノ×ケシキ ページ9
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それを見た私は、すぐに近くに空いていた穴たちを塞ぐように船員たちに指示し、横隔壁の近くまで足を早めていた。
何故船員ではなく船のことなど全く知らないであろう私が、彼らより先に海水が入ってきていることに気づいたのか。
それは、
私が大学在学中に単位が足らず仕方なく履修した船舶の授業を受けていたから、という理由に帰結する。
ゴン君と廊下を駆けていた時、激しい怒号と暴風の音の中で、私は微かな水の音を聞いた。
静かにコポコポと、例えるならばお風呂の追い炊きで浴槽の給湯器(お湯が出てくる箇所)から気泡を立てて出てくるようなものだ。
(まさか、嫌々受けていた教授の授業がこんなところで役に立つなんて……!!)
船底の入口から奥まで、数人の船員が各々そばにあったぞうきんや蓋で空いた穴を塞いでいく。
それを横目に見ながら私は、急いで横隔壁の近くにある微小な穴をポケットのハンカチで塞ぐが、途端に水浸しになりそれはすぐに役目を終えてしまう。
(まずいな……塞げるものがない)
近くを見渡すも、穴を塞ぐのに使えそうなめぼしい物は見つけられず私はただただ焦っていた。
「!」
はた、と。
目つきが悪すぎる教授の授業を頭の片すみから引っ張りだし、私はひとつの可能性にも似た微かな光をみた。
横隔壁の横にあった壁に埋まっていた鉄製の小さな扉を開き、そこにあるレバーに手を伸ばした。
──────────(このレバーを、回す)
ハァハァ、と荒い呼吸の中で、私は人生で初めての生死を伴う選択を迫られていた。
「横隔壁の近くには大抵レバーが設置してある。それは隣のモーター室への介入を防ぐ鉄製の扉を下ろすものと、横隔壁を上げるもの、2つがある」
教授の言葉が、フラッシュバックのように頭の中を駆け巡る。
そうだ。
これは多分この船内ならば、あの船長ぐらいでしか知らない情報。
今船底にいる船員たちは、水漏れにさえ気づけなかったのだから。
つまり、私が、ここで決めなければならない。
(怖い、止めたい、だって私、こんな、自分で決断なんて、誰かお願い、いや、でも、私しか)
「君ならきっと大丈夫だよ」
──────────(!!)
私が、やる!!
ガッ、と勢いよくレバーを引いて私はゆっくりと目を開いた。
そこには、横隔壁の前に1枚の鉄の壁がモーター室への入水を防ぐかのようにずっしりと鎮座していた。
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実珠 - あぴさん» はい!!とても楽しみです!!あーキルア格好いいなぁー!!!自粛明けで大変かと思いますが是非更新頑張って下さい、応援してますよ! (2020年6月8日 22時) (レス) id: 455069b8f0 (このIDを非表示/違反報告)
あぴ(プロフ) - 実珠さん» お久しぶりです〜今回もコメントありがとうございます^-^ 自粛明けて忙しくなりましたしね〜これから本格的にハンター試験も始まりますので、また読んでいただければ嬉しいです! (2020年6月8日 14時) (レス) id: 672d662638 (このIDを非表示/違反報告)
実珠 - あぴさん» お久しぶりです!学校行ってて中々見えませんでした…まとめて読んだんですけど久しぶりだからか余計に面白く感じました!やばい!面白い!!これからも応援してます! (2020年6月7日 19時) (レス) id: 455069b8f0 (このIDを非表示/違反報告)
あぴ(プロフ) - 璞さん» 初めまして、コメントありがとうございます!読んでいただき嬉しいです(^^)大変お待たせしました!私自身もやっと始まる〜!という感じです笑 全員キャラがいいんですよね……わかってくれる方がいて嬉しい…絵も褒めていただきありがとうございます、更新頑張ります^-^ (2020年6月5日 13時) (レス) id: 672d662638 (このIDを非表示/違反報告)
璞(プロフ) - あぴさんがみんな好きっていうのとってもわかります!!^ ^ 中でもアダルトリオはとっても素敵だと自分も思いました!、話は戻るのですが、、絵もとても素敵で本当に更新楽しみです、無理しないように頑張ってください(?)応援してます!!^ - ^ (2020年6月5日 0時) (レス) id: e8c51eabaf (このIDを非表示/違反報告)
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