リスク×ト×タスク ページ2
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ぐわんぐわんと揺れている船の中に、私はいた。
頭の中までも揺れていて、何がどうなっているのかわからないまま私は辺りを見渡す。
ちゃんと思い出せる。
自分の名前、出身、年齢、両親の名前、出身大学、会社の名前……
けれど、この場所だけがわからなかった。
確か私は、いつも通り平日の会社に出勤していた。
朝、コーヒーをカーペットに零してしまいシミになり泣きそうになったことも、ゴミ出しを忘れてたことも、上司に怒鳴られたことも鮮明に思い出せる。
それから……
「大丈夫?」
いきなり私の頭上から声が聞こえて、とっさにそちらを見るとつんつん頭の純粋な瞳をした少年が、私を心配そうに見ていた。
青年はバックを抱えており、そこから釣りに使う竿が伸びていて、恰好や雰囲気からなんとなく「同じ」人間じゃないなぁと感じた。
私は迷惑をかけまいと笑顔を作ろうとするも、また船が大きく揺れ一気に気分が悪くなり口元を押さえる。
「向こうに水があるから飲みに行こう!」
「……ご、ごめんなさい」
自分よりもひと回り歳の離れた彼に肩を貸してもらい、その食糧などが置いてあるという部屋に連れて行ってもらうことになった。
まだ頭がグルグル回り目の焦点も定まらないのにも関わらず、私は隣の少年の強い目に惹かれて彼に気づかれないようにチラチラと伺っていた。
─────綺麗な目だ。
純粋で透明で、何色にも染まらない。
目に見えるもの全てが、この子にはキラキラして見えているのだろう。
羨ま、しいな。
「わっ!」
「!」
ぐるっと一回転したような、そんな感じがしたと思うと、船は目を覚ました時よりも物凄いうねりで船内を奔放した。
ガシャガシャドカッっという音がいたるところから聞こえてきて、廊下にいた私たちも例外なく壁に弾き飛ばされる。
(うわ……死ぬなこれ……)
背中に衝撃を受け、意識を飛ばしかけたその時、目の前の流れていく景色が反転して手首をグイッと掴まれた。
その力強さに目を見開くと、見えたのは肩を貸してくれていた少年の眩しいくらいの笑顔で、ニカッと歯を見せた。
「行くよ!」
訳がわからないまま困惑していると、手首を首に回され少年は私をいとも容易く横抱きにした。
そしてそのまま、まるで宇宙にいるような空間を少年はぴょんぴょんと飛び跳ねて廊下を進んでいく。
その今までに体感したことのないスピードと、船のうねりに目を回しながらも視線の端に見えた少年の楽しそうな表情に────
私はどこか、憧れを抱いてしまった。
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実珠 - あぴさん» はい!!とても楽しみです!!あーキルア格好いいなぁー!!!自粛明けで大変かと思いますが是非更新頑張って下さい、応援してますよ! (2020年6月8日 22時) (レス) id: 455069b8f0 (このIDを非表示/違反報告)
あぴ(プロフ) - 実珠さん» お久しぶりです〜今回もコメントありがとうございます^-^ 自粛明けて忙しくなりましたしね〜これから本格的にハンター試験も始まりますので、また読んでいただければ嬉しいです! (2020年6月8日 14時) (レス) id: 672d662638 (このIDを非表示/違反報告)
実珠 - あぴさん» お久しぶりです!学校行ってて中々見えませんでした…まとめて読んだんですけど久しぶりだからか余計に面白く感じました!やばい!面白い!!これからも応援してます! (2020年6月7日 19時) (レス) id: 455069b8f0 (このIDを非表示/違反報告)
あぴ(プロフ) - 璞さん» 初めまして、コメントありがとうございます!読んでいただき嬉しいです(^^)大変お待たせしました!私自身もやっと始まる〜!という感じです笑 全員キャラがいいんですよね……わかってくれる方がいて嬉しい…絵も褒めていただきありがとうございます、更新頑張ります^-^ (2020年6月5日 13時) (レス) id: 672d662638 (このIDを非表示/違反報告)
璞(プロフ) - あぴさんがみんな好きっていうのとってもわかります!!^ ^ 中でもアダルトリオはとっても素敵だと自分も思いました!、話は戻るのですが、、絵もとても素敵で本当に更新楽しみです、無理しないように頑張ってください(?)応援してます!!^ - ^ (2020年6月5日 0時) (レス) id: e8c51eabaf (このIDを非表示/違反報告)
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