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No.63 ありがとう ページ20

「お兄ちゃん、ありがとう…さっき」


彩は裕樹の部屋に入ると、まず一言言った。


「別に。お袋が思ってるままのお前になって欲しくなくて言っただけだ」



『思ってるまま』



彩は首を捻った。



「しっかり勉強して、良い中学、高校、大学、会社に入り、スポーツもしっかりやる。それによって内申も良い状態保つ。俺はそうやって、今までの人生を送ってきてる。自分がやってることに不満を感じたことはないけれど、でも、それらは全部、親がやれって言ったことをやってるようなもんだ」



授業で使うのだろう資料を作るため、パソコンに顔を向けながら、声は彩の方に飛ばす。

画面をじっと見つめて語る兄の姿を、彩は何も言わずに見ていた。



「俺は、ずっとあいつらの思ったまま動いてた。……動かされてた。だから、自分で何でも動けるお前が羨ましい」


パソコンから目を離し、彩の方を振り向いた。

机の上に置いていた空になったカップを手に取ると、椅子から立ち上がり、彩の頭に手を置いた。


「お前は、俺みたいになるなよ」


そう言うと、部屋を出て、静かに扉を閉めた。



『親がやれって言ったこと』


『自分で何でも動けるお前』


『俺みたいになるなよ』




………ずっと、言われたことは絶対やらなければいけないと思っていた。


反抗することは悪いこと、勝手に行動するのはダメなこと。


お兄ちゃんみたいになる。


そんなのが昔はひとつの夢みたいなものだった。



彩は動かない自分の足をじっと見つめていた。

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徠楓 - とても面白いです!これからも面白い作品楽しみにしています! (2022年10月24日 16時) (レス) @page22 id: 096e7909ce (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - 大好きです! (2021年12月24日 11時) (レス) id: be87187744 (このIDを非表示/違反報告)
彼方 - めっちゃ面白いからこれからも色々なお話待ってます! (2021年12月24日 11時) (レス) @page22 id: be87187744 (このIDを非表示/違反報告)
花奈(プロフ) - Raia。さん» ありがとうございます! (2019年1月28日 17時) (レス) id: c4cc4a66e9 (このIDを非表示/違反報告)
Raia。(プロフ) - おもしろい!頑張ってね!更新待ってるよ〜! (2019年1月28日 14時) (レス) id: 098a0cee36 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花奈 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年1月11日 22時

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