助けてあげる side，Iー�� ページ10
「朔間、いる？」
キィと変な音を立てて、音楽室のドアを開く。
相変わらず真っ暗で、不気味な部屋。
そして、朔間からの返事はなかった。
暗い中、足元に気をつけながら歩いていると、何かに思いっきり引っかかった。
「うわっ！？」
棺桶だ。
あぁ、お昼寝タイムか。
ホント、兄弟だなぁ。
「朔間、いるでしょ。ちょっといい？」
俺は棺桶の蓋を開けた。
やっぱり、寝起きの朔間がいた。
「瀬名くん。珍しいの、おぬしが我輩を訪ねてくるなんて」
ゆっくりと立ち上がり、棺桶から出てきた。
「くまくんのことでちょっと相談があるんだけど」
「くまくん……？あぁ、凛月のことかの？」
「そう。あの幼なじみと何かあったみたいでさ、あんた昔、衣更真緒の記憶を抜き取ったんだって？あれ、今もできるの？」
朔間は険しい顔つきで俺を見た。
「……凛月が、また衣更くんを噛んだのか？」
俺は首を振る。
「いや、牙を出しちゃって、怖がらせちゃったってすごい後悔してる。ねぇ、できない？」
少し考え込むと、「瀬名くん」と、口を開いた。
「凛月が我輩にそうしてくれと言ったのか？そうでないなら、我輩はその願い、受付られんの」
「でも、俺はもうくまくんのあんな顔、見たくない」
「しかし、瀬名くんは部外者じゃろうて。これは、凛月と衣更くんの問題じゃ。おぬしが口出しをすることでもないぞ」
相変わらず、痛いとこついてくるなぁ……。
でも、否定できない。
俺はこいつの言う通り部外者で、何の関係もない。
ただ、くまくんを助けたいっていう自己満か。
「あんたに相談したのは間違いじゃなかったと思う」
だけど、
「くまくんを助けたいっていう気持ちは変わんないから、気が向いたら協力してよねぇ！」
朔間はクッと笑ってヒラヒラと手を振った。
「気が向いたらの。久々におぬしと話せて楽しかったぞ、瀬名くん。また来るがよい」
俺は音楽室から出た。
さて、他に何か手段はないかなぁ？
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