E組にやってきたフルート奏者【赤羽業】 (ページ38)

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ごめんなさい！まだ渚saidです！

『えっとまずは⋯

私の親は今年の4月に離婚をしました！

最初は父が引き取ってくれる予定でしたが、書類の手違いがあり私は母の戸籍に入ってしまったんです

それにより私の事を自分の物と勘違いした母は私の事を離してくれなかったんです

父がどうにかしようとしてくれましたが、暴れて手がつけられなくなってしまったんです

それで手続きが完了するまで私は母の所にいることになりまして⋯

本当はもっとすんなりいく予定だったんですけど、なかなか難しくって』

彼女は今にも泣きそうな声で話し続けた。

『離婚の原因は育て方の違いでした

母はどうやら自分達のように世界で活躍する音楽家に育てたかったみたいで⋯私が小さい頃から音楽の教育をしてきました

でも父は自由に好きな事をさせて育てたかったみたいで、母の教育が気に入らなくてよく喧嘩をしていました

私は母に従うのが嫌で椚ヶ丘中学校に来ました』

『そして私が母に引き取られてからは毎日フルートの練習漬けの日々でした

そのせいで中間テストも修学旅行も休ませられ、友達を作ることも仲良くすることも名前を呼ぶことさえ禁じられていました』

その時に僕は初めて彼女の事を分かったような気がした。

そしてどうして彼女が僕の事を頑なに苗字で呼び続けるのか、敬語で皆に接し続けていたのか。

『皆さんにも嘘をついていました

⋯これは私の本性じゃありません

スマホも持ってます！

本当は皆とタメ口で話して、名前を呼んで、連絡を交換したかった！』

彼女は泣きながら自分の気持ちを初めて言ってくれた。

「Aさん、貴方はこれからどうしたいのですか？

言ってみてください

それに本当はもっと話さなくちゃいけないことがあるじゃないですか？

過去のことよりも今のことを⋯」

殺せんせーがそう言うと、彼女は泣きながら言った。

『私は無事、父親の戸籍に戻ることができ⋯如月Aから貝塚Aになりました！

そして⋯私ともう1度友達になって！お願いします！

私を本当のE組の生徒にしてください！』

「当たり前だろ！」

「そうだよ！」

「断る理由なんかねぇよ！」

クラス中から温かい声が聞こえてきた。

もちろん僕だって同じ気持ちだ。

『皆⋯ありがとう！』

こうして彼女は本当のE組の生徒になれたのだった。