E組にやってきたフルート奏者【赤羽業】 (ページ34)

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赤羽君と2人の時間。

もう夏だっていうのに木陰はそれほど暑くもなく、涼しい風が吹き心地が良かった。

自分から話そうと言ってきたのに、ただ空を眺めているだけの彼はどこか大人っぽい表情をしていた。

私はどうしてだかこの空気に耐えられなくなり、喋り始めた。

『あの⋯どうして私の事名前で呼ぶんですか？』

「えー？転校して来た時に好きなように呼んでって自分で言ってたんじゃん

何か不都合でもあった？」

『不都合というか⋯普通に気になって』

すると彼はうっすら笑みを浮かべて話し始めた。

「ほら、初めてここであった時さAちゃん生徒手帳落として行ったじゃん？

その時さ、俺見ちゃったんだよね

Aちゃんの苗字が如月じゃなかったの」

『どっ、どうして勝手に見たんですか！！』

「ごめんごめん

つい興味が湧いちゃってさ

それで今の苗字が嫌かもなってただの俺の解釈で名前で呼んでる

で、それよりなんで苗字貝塚なの？」

うわぁ、やらかした、どうしよう。

今はまだ話せないし、でももう赤羽君にはバレてる⋯。

せっかく今まで誰にもバレずにやってきたのに⋯。

「まぁ言いたくないなら別にいいけどね」

『え？いいんですか？』

「うん、いいよー

言えない理由でもあんでしょ？」

『⋯はい』

「その言えない理由って皆との間にどこか壁があったり、ずっと敬語で喋ってたり、渚君のこと名前で呼ばなかったりするのとも関係ある？」

この人⋯全部知ってる。

『どうして⋯そこまで？』

「いやー、渚君はさ、親の事とかあって名前で呼んでほしいって皆に言ってるんだよね

なのにAちゃんだけはどうしても呼んでくれないって渚君悩んでたからさ」

そんな事情があったんだ。

知らなかった⋯。

私悪いことしてるな。

『ごめんなさい、全然知りませんでした

今はまだ本当に理由は言えません

でも⋯もう少しで全て解決する予定なんです

解決したら皆さんにお話します

それまで待ってて貰えませんか』

「もちろん、俺は待つよ

もしさ、その事が解決したら敬語取って俺の事名前で呼んでくれる？」

『はい、もちろんです

むしろ解決したら最初からその予定でした

本当の私はこんなじゃないので⋯

あっ、あと皆さんにはこのこと内緒にしていてください』

「もちろん

内緒にするよ」

『ありがとうございます』