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降り出した雨が少しずつ制服を濡らし、そのせいか体がずんと重くなる。早足だった勢いはどこへいったのだろうか、歩みを進める足は思わず止めてしまうほど重く感じた。
浮かない気分はこの雨のせいだ、きっと。
辺りを見回してみても近くに雨宿りできそうな目ぼしい場所も無く、雨に打たれるがまま家に向かうことしかできない。引きずる足ができたばかりの水溜りを踏みつけ、ぴしゃんと雨粒が弾ける。勢いを増していく降雨が体の深くまでも染み込み、体温が奪われていくのをひしひしと感じた。
「……さむ」
「……っおまえ、傘は！？」
冷たくなった掌をぼんやりと眺めていると、雨音に混じった自転車のブレーキ音と、慌てたような声が背後に届いた。この声は、恐らく。誰か一瞬で理解したが、振り向きたくはなかった。
……だって、セットしていた筈の前髪は見る影もなく額に張り付いているし。
無駄だとは思うけれど右手で前髪を整えながら振り返れば、今の空には似合わない鮮やかな水色が真っ直ぐ此方を見つめていた。
「あれ、あの人は……」
「いやそんなん後でええやろ……！とりあえず、後ろ乗れ！」
荷台にあったエナメルカバンを前カゴに突っ込むと、はよせえと目で訴えられる。降り頻る雨は止みそうにない。おずおずと銀色に跨ると、背中越しに彼が此方を向いた。
「どっか持っとけ、落ちるで」
一般的によく見るドラマや漫画では、背中や腰に手を伸ばしていた。しかしジャージから着替えたのだろう、薄い学生シャツが濡れて大きな背中に張り付いており、それに手を伸ばすのは憚られた。少し迷って、跨ってなお少しだけ見える荷台の部分を静かに掴んだ。先輩は私が掴んだのを一瞥すると、何も言わずにゆっくりとペダルにかけた足に力を込める。ぐらり、一度大きく揺らいだが、先輩の脚力のおかげか直ぐに持ち直し景色が移ろいゆく。
言葉は無かった。あの人はどうしたのかとか、何を話したのかとか、どこに向かっているのかとか、話したい事は沢山あったがこの雨では恐らく会話もままならないだろう。不気味な雰囲気を放つ神社横を抜け、信号を二つほどさらに進む。彼が自転車を止めたのはコンビニの軒下だった。
「そのうち止むやろ」
「ですね。向こうのほう、明るいし」
天気は偏西風の影響で西から東へ流れる。いつだかに祖父が教えてくれた。遠くのビル街の隙間に見える西側の上空は、すっきりと晴れていた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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