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一度は認識した「恋」という感情は、例の怪我の件から自分でもよく分からなくなっていた。恋情に思ったものは、ただ親しくない人と距離を縮められた喜びだったのかもしれない。新生活に浮き足立つ自分の勘違いという一言で済ませられてしまう、軽いものだったと思う。
それでも、彼の姿を目で追ってしまう事実は存在する。ひとりのマネージャーとして部長に抱く尊敬の情と恋慕の情の境目が全く持って分からない。それはさながら夕暮れ時のグラデーションを描く空のようで、いつにも増して今日の私は空を見上げていた。
ひとり、またひとりグラウンドから姿を消してゆく。そして、最後の一人がボールを元に戻した時、辺りは一段と静かになった。
「お疲れ様です」
「お疲れ。……もしかして、あそこにおるやつか？」
渡したボトルのスポーツドリンクを飲み干すと、コネシマ先輩は正門を指差し目を細めた。同じように目を細めると、学校名が彫られた石の看板にもたれかかり、しきりに前髪を触る制服姿の女の子がそこにはいた。間違いない、私に頼み事をした二年生の先輩だった。
「片付けやっとくので。待たせるのもアレですよ」
「いやええわ。あんなん、待たせときゃええねん」
カラカラとボールの入ったカゴを引いて足早に倉庫に向かう先輩の背中を慌てて追う。
「いや、でも……」
「閉めるで」
「あ、ちょっと！」
先輩のせいで危うく倉庫の中で夜を過ごさないといけなくなり、慌てて外へ飛び出る。ふは、と楽しそうな笑い声が他に誰もいないグラウンドに響いた。心地いい空気が肌を撫でた。湿気を含んだ風は六月の訪れを感じさせた。
「じゃ、俺チャリとってくるわ」
「……はい。お疲れ様でした」
背を向けた先輩を軽く見送って、一足先に校門へと向かうとぱちりと二年の先輩と目が合った。ありがとう、なんて言いたげに上がった口角に軽く会釈をして、いつもより少しだけ歩幅を大きくした。……目の前を歩くなんて、たまったもんじゃないし。
仕事帰りであろうサラリーマンを追い越して、買い物帰りのおばちゃんも追い越して。意味も無く私は早足だった。
ぽつり、ぽつり。
冷たい雫が頬に垂れる。先程まで美しかった空は、いつのまにかどんよりと厚く黒い雲が覆っていた。鞄を覗きはあと深く溜息をつく。生憎、折り畳み傘は持ち合わせていなかった。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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