8 さながら ページ8
ピー、と甲高いホイッスルの音が、若干の砂が舞うグラウンドに響き渡る。それと同時に、ユニフォームを着た選手達がゆっくりと動き始めた。
グラウンドを仕切る胸ほどの高さのネットの後ろ。ここ三日間で少しだけ打ち解けた一年女子三人で、試合の様子を固唾を呑んで見守る。練習試合といえど、その様子は本番さながらで、どちらのチームも気合が入り、数十人のギャラリーからの声援も忙しなく選手達に飛んだ。
「相手チームも強いらしいけど、やっぱこの学校は流石やね。攻撃の動きが違うわ」
三人組のうちの一人、ショートカットの彼女は中学で女子サッカーをやっていたらしく、キラリと観察眼が光る。その言葉に、そうなんだとしか返せないのがもどかしいが、せめて試合は全て目に焼き付けようと、動き回る選手達にピントを合わせた。
試合はこちらが主導権を握り、相手ゴールの周辺に積極的にボールが運ばれる。必然的にその近くのキャプテンにボールが回っていた。
「……相手チーム、当たり強くない？」
「うーん…確かに接触多いな」
先程からこちらのチームの選手が砂に手をつくのを、何回も目にしている気がする。
……あ、キャプテンがまたボールを持った。
と思いきや、待ってましたと言わんばかりに相手チームの一人が容赦なく突っ込んでいく。それに訝しげな顔をした彼はなんとか躱そうとするが、避けきれず丁度彼の左腕と相手が交錯し、激しく転倒する。
「あれ、もはやタックルだよね」
「流石にファールやろ……よかった、取られた」
ピピとホイッスルが鳴り、審判員が手を上げて駆け寄った。彼を倒した張本人も近寄り手を差し伸べる。それを左手で掴もうとした彼は、一瞬顔を歪めてその手を下げ、そして右手を伸ばした。
「ね、今の……」
他の二人は気付いていない様子で、頑張れと大きな声援を送っている。私の気のせいだろうかと、もう一度彼に視線を送っていると、その後のプレーもやはりその左手……いや、左腕全体を庇っているように見えた。
引き続き、相手チームの当たりは強い。それでも文句ひとつ口にせず、彼は積極的に味方への指示を飛ばしていた。
残り三分、再びキャプテンがボールを持つ。相手チームの一人を躱し、ゴールを狙う──かと思いきや、彼はゴール前で冷静に反対側にパスを出した。見事それは通り、がら空きだった反対側からボールが弧を描く。
長めのホイッスルの音が響いた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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