90 追憶 ページ40
グルッペン様は私の頭をふわりと撫でると静かに扉を出て行った。
「優美に、逞しく…。孤児院で、聞いた言葉」
それでもグルッペン様はミルザさんの夫の前の妻の子であると言っていた。孤児院出身の筈は無い。
ふとある映像が頭をよぎった。
「これ、なんていう植物なの？」
「エケベリア。多肉植物さ」
ピンク色を指差しながらしゃがんでいるのは幼い頃の私。そしてその側に立っている人物の顔には靄がかかっていて分からない。でも、この佇まいは──
______________
あれから一ヶ月が過ぎた。レッスンは進み舞は完成に近づいた。
今回の曲は大恋愛を題材にしたもの。作曲者のフィアンセへの想いが込められていると書かれている書物を読んだ。このフィアンセは大病を患っており、余命が間近に迫っていたらしい。そんな彼女に向けた、作曲者の愛のメッセージ。愛しい人へ向けて奏でられる旋律は、暖かさの中に陰りを持ったものである。
それをなんとか表現しようと試行錯誤するもどうもしっくりこない。それはロボロも同じなようで、二人で頭を捻る。
「ちょっと息抜きに、当日の衣装でも考えるか」
ロボロに連れられ来たのは嘗てミルザさんにも連れてこられた衣装室。どうやらミルザさんも呼んでくれたらしく、三人で選定する……筈だった。
「Aちゃん舞踊るんやって？楽しみやわぁ」
何故かオスマンさんも来た。彼は外交担当。顔も見識も広い彼は思うところがあるのだろうか、一緒に選んでくれるようだ。
私以外の三人はああでもないこうでもないと衣装を引っ張り出しては私に当て、違うなと首を振る事を繰り返した。部屋にある衣装の三分の二に首を振った所で、私はふと目に付いた衣装を手に取った。
水縹色をベースに繊細な金色の飾り。手首まである広がった袖はほんのりと透け肌色を映し、手首で纏められふんわりと揺れる。傍にあったヘッドベールは腰まである長めのものだった。
「これ、どうですか？」
三人の反応も悪くなさそう。一回着て見ることにした。試着室に入り身につけているものを取る。先程の衣装に袖を通せば自分の中でもしっくりときた。恐る恐る外に出ると、三人は感嘆の声をあげた。
「ええ、めっちゃ可愛ええなぁ」
「それやな」
「水色、とっても貴方に似合う。それがいいと思うわ」
こうして当日の衣装は決まった。
水色が似合うと言われて嬉しかったのは、内緒の話。
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あん(プロフ) - RUIさん» RUIさんはじめまして、素敵なコメントをありがとうございます。そのように仰って頂けて大変光栄です…！再び読んでくださったなんて本当に嬉しいお言葉です。ありがとうございます。引き続きパート3も楽しんでいただけたらと思います…！ (2019年8月21日 20時) (
レス) id: 2a14f29560 (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 修正前から拝見しておりました。この作品は私が出会った中で1番印象的で大好きな作品です。少しの間占ツクを離れていて最後に読んだのは半年ほど前でしたがほとんどの内容を知っかりと覚えていました。続きが公開されるのを今か今かと待っています笑大好きです！ (2019年8月19日 0時) (レス) id: 58d14c974b (このIDを非表示/違反報告)
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