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「それでは、そろそろ行きます」
「おう」
扉の前に立って一度振り返る。ちらりと見えた窓の外は陽が落ちかかり、夕暮れに染まっていた。背の高い彼を少しだけ見上げ、水縹の瞳と視線が重なり少しずつその距離が縮まる。目を閉じれば手が添えられる頬。
優しく触れた唇に目を開き、そして添えられた手をギュッと握る。
「……お仕事、無理しすぎないで下さいね」
「それはAもやろ！体気を付けてな」
ありがとうございます、と小さく頷く。前を向き直し扉に手をかける。
「……A」
小さく呟かれた名前に振り返る。すると何故かハッとした顔のコネシマさん。
「なんでしょう？」
「……いや、なんもないわ。スマン」
こうならないように素早く部屋を去ろうと思っていたのに。思わず彼の方に駆け寄ってそのまま首に腕を回す。
「うわっ」
受け止めてくれたものの、彼は少しだけ後ろに下がる。
「狡い、本当に。……こんなの、私だけ寂しいみたいじゃないですか」
腕に力を入れれば、上から降ってくる笑い声。
「お前だけじゃないで。俺もそこまで大人やないわ」
どちらからともなく重なる唇。
結局あの後もう少しだけ一緒にいて、私は暖かな気持ちで部屋を出た。明日からの仕事も頑張ろうと、小さく意気込む。
そのまま足を進め、私は図書室に向かった。読もうと思ったのはこの国、イスファムについて書かれている本。トントンさんに付くことになった以上、最低限は知っておかなければならないと思ったからだ。しかし、探せどあるのは分厚い本に昔の字体で書かれているものばかり。溜息をついていると後ろから足音が聞こえた。
「休日まで勉強とは流石ですね」
穏やかな表情のエーミールさん。こういう本を探しているんです、と言うと図書室の奥の小部屋から二三冊持ってきてくださった。
「ここにあるのは難しいのばかりですから。これなんかは読みやすいと思いますよ」
ちらりと中を見るとこの国の歴史が分かりやすい言葉で書かれていた。お礼を言うとエーミールさんは小さく微笑んだ。
「そんな貴方だから、コネシマさんが夢中になる訳だ」
その言葉に固まる。
「あれ、二人は恋人同士だと認識していましたが違いましたか？」
大先生とショッピ君しか知らない筈なのに何故かエーミールさんは知っていた。
「……まだ、恋人じゃないです」
バレているなら仕方ないとハレムのトップになったらと言う話をする。
エーミールさんは彼らしいですね、と穏やかに笑った。
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あん(プロフ) - RUIさん» RUIさんはじめまして、素敵なコメントをありがとうございます。そのように仰って頂けて大変光栄です…！再び読んでくださったなんて本当に嬉しいお言葉です。ありがとうございます。引き続きパート3も楽しんでいただけたらと思います…！ (2019年8月21日 20時) (
レス) id: 2a14f29560 (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 修正前から拝見しておりました。この作品は私が出会った中で1番印象的で大好きな作品です。少しの間占ツクを離れていて最後に読んだのは半年ほど前でしたがほとんどの内容を知っかりと覚えていました。続きが公開されるのを今か今かと待っています笑大好きです！ (2019年8月19日 0時) (レス) id: 58d14c974b (このIDを非表示/違反報告)
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