71 偶然とは ページ21
遅めの朝飯をゾムと街の流行りの店で済ませた。二人とも休みの日なので、時計を気にする必要も無い。
「トントン、あれAちゃんやんな」
ゾムが気付いたのは両手にジュースの入れ物を持ったAさん。俺が休みなのでヴァレットである彼女も一日休みのはずだが、どういう訳か両手にジュースを持って何処かに向かっている。服装はハレムの衣装で、髪の毛は緩く括られている。ハレムの女だったら昼間に近いこの時間まで活動することは無いはず。
「どこ行くんやろ、ちょっと見に行かん？」
ゾムが悪い事を考えている時の楽しそうな声に、やめようと言う気も失せる。俺も彼女の行き先が気にならないと言えば嘘になる。息を潜めこっそりと後をつけると、俺とゾムは思わず声を失った。
彼女が止まったのはコネシマの部屋の前。両手が塞がっている彼女は扉を開くことができないので、部屋の中に向かって何か声をかけている。ガチャリと開かれた扉の中から出てきたのはやはりコネシマだった。そしていつも俺達には絶対に見せないような優しい笑みでジュースを受け取り、そして彼女の頭を撫でた。それに彼女も同じような頬笑みをコネシマに返し、部屋の中に入った。
「……なんや、そういう事か」
思わず口にした言葉。全てが繋がった。あのコネシマが、最近徹夜で仕事を頑張っていたワケ。俺の休み、つまりAさんの休みに合わせ一日一緒に過ごせるように休みを作るため。先程の二人の笑みを見れば、ただのミフターフとハレムの女という関係でないのは明白であった。
「……トントン〜俺もう行くわ」
先程の楽しそうな声はどこにいったのか、振り返るとゾムは既に後方に歩いていった。その表情の奥に隠された感情は、俺には読めなかった。
「おっトン氏やん」
代わって現れたのは大先生。ヘラヘラとした笑みで佇んでいる。何も言葉を返さない俺を不思議に思ったのだろう、どしたん？といつもの通りの声色で俺に声をかけた。
「なぁ大先生、シッマとAさんって……」
「……俺、Aちゃんだけは夜呼べへんなぁ」
一瞬目をみはった大先生だが、意味深な言葉を残して直ぐに去って行った。当の俺は、自分が先程の光景を見た時の感情を振り返る。胸に広がったモヤモヤとした感情。俺の前では見せたことのない彼女の表情に、何か黒いものが渦巻いた。それを振り払うように俺は早足で自室に戻りベッドで目を閉じた。
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あん(プロフ) - RUIさん» RUIさんはじめまして、素敵なコメントをありがとうございます。そのように仰って頂けて大変光栄です…！再び読んでくださったなんて本当に嬉しいお言葉です。ありがとうございます。引き続きパート3も楽しんでいただけたらと思います…！ (2019年8月21日 20時) (
レス) id: 2a14f29560 (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 修正前から拝見しておりました。この作品は私が出会った中で1番印象的で大好きな作品です。少しの間占ツクを離れていて最後に読んだのは半年ほど前でしたがほとんどの内容を知っかりと覚えていました。続きが公開されるのを今か今かと待っています笑大好きです！ (2019年8月19日 0時) (レス) id: 58d14c974b (このIDを非表示/違反報告)
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