51 懐かしさに微笑みを ページ1
長い一日を終え、王宮からメイド達の寮へと歩いている時が一番の至福の時だ。燦然と煌めく夜空の星に思いを馳せながら、明日も頑張ろうと心に決めるのだった。
今日の夜は久しぶりにゆっくりしよう。
そう思いながらベッドに体を沈める。それでも、じんわりと滲み出る汗の所為で中々寝付けずにふと時計を見ると、丁度日付が変わる頃だった。すると扉とノックされる音が聞こえる。こんな時間に何だと思いながらも扉を開ける。
そこにいた人物と会うのは久しぶりだった。口を開きかけた私の口元に手を当て、人差し指を立てる。
「……とりあえず行くで」
言葉を発する間も無く担ぎ上げられ、走り出す人物。そのスピードに、落ちるかもしれないという恐怖で声も出なかった。
王宮内のどこかの部屋につき、ガチャリと扉が閉められる。明かりが灯り、やっと地に足をつけることが出来た。
久しぶりに会った彼は、少し頬のあたりが痩せたように思えた。きっと、過酷な任務だったのだろう。
「ミフターフが、あんな所に来ちゃダメですよ」
あんな所、とはメイド達の住まいの事だ。王宮内では無いので少し距離がある。王宮内に住む人間で来るものは居ない。ミフターフとしての、体裁もあるだろうに。
「まず、言う事あるんちゃう」
唇を尖らせながら、訝しげに声を掛けられる。
……そうだった。
久しぶりに孤児院に帰った時、皆が掛けてくれる言葉をそのまま口にする。
「おかえりなさい、ゾムさん」
「ただいま。ほんとは明日会えると思ったけど、待ちきれんかったわ」
尖った八重歯を出して笑う彼。無事だったという安心感を噛み締めていると、あっという間に腕を回され温もりに包まれる。
「思ったより長くかかってなぁ。結構大変やった」
「盗賊の退治ですか」
「せや」
お疲れ様ですと言えば彼は不思議そうな顔で此方を見つめる。エメラルドグリーンの瞳が綺麗だな、なんて思っていると彼は笑みを無くして、逆に眉を顰めた。どうしたんだろうと思ってる間にも、腕を引っ張られ共にベッドに寝転がる。疲れていないんですか、と聞けば、彼は溜息をついた。
「流石に疲れたわ。せやから、今日はこれだけ」
抱き枕のように、彼の逞しい腕に抱きしめられる。
「……盗賊の退治、ありがとうございます。食べ物が回るようになったのも、ゾムさんのお陰ですね」
腕への力が増した気がした。
「……ありがとうな」
穏やかな寝息が聞こえるのに、そう時間はかからなかった。
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あん(プロフ) - RUIさん» RUIさんはじめまして、素敵なコメントをありがとうございます。そのように仰って頂けて大変光栄です…！再び読んでくださったなんて本当に嬉しいお言葉です。ありがとうございます。引き続きパート3も楽しんでいただけたらと思います…！ (2019年8月21日 20時) (
レス) id: 2a14f29560 (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 修正前から拝見しておりました。この作品は私が出会った中で1番印象的で大好きな作品です。少しの間占ツクを離れていて最後に読んだのは半年ほど前でしたがほとんどの内容を知っかりと覚えていました。続きが公開されるのを今か今かと待っています笑大好きです！ (2019年8月19日 0時) (レス) id: 58d14c974b (このIDを非表示/違反報告)
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