【深海奏汰】〜1〜 ページ45
私にとって父という人物は超えなければならない壁でもなければ、目標とするものでもない。
嫌悪な仲でもなければ良好という仲でもない。
かといって、何も感じてないわけじゃない。
私の中での父は、気になるような気にならないような、不確定要素でもなければ全て肯定しているわけでもない、不思議な存在だった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
『…………。』
テーブルに、父と私と二人だけ。
今日の晩御飯の海鮮丼に、鼻歌を歌いながら嬉々として醤油をかけている。
ふわふわと楽しげに、かつ繊細な横顔からは想像もできないくらいにかける醤油の量はえげつない。
何それ、ご飯が醤油でベチャベチャじゃん。
塩分とりすぎじゃん。
アイドルとしてどうなの。
ていうかそれ、しょっぱくないの??
頭の中で丁寧にツッコミをいれるが、それを口に出すつもりも、ましてや本人に伝えるつもりもない。
伝えることもできなくはないけど、会話が続く気がしない。
ここ最近あの人は仕事が多くて、なかなか家に帰ってこなかったから顔を合わせるのは久しぶりだった。
けれど口を聞きたくないわけでもなく、かといって話しかけたいということもなかった。
きっとこれは反抗期じゃないけれど、かといってなにも不満がないわけでもないのだ。
もう何年もちゃんと喋った記憶がないし、喋ったとしてもリモコンとってとか電気消してとか、醤油とってとか、それから、それからーーー…
「A〜」
『っ⁉…な、なに?』
「Aも【おしょうゆ】かけますか〜?」
『え、醤油?』
「【おしょうゆ】をとって、といわれたので〜♪」
あ、口に出してた?あれっ。
『いや、もうかけてある…ってちょっと待って。聞いてる?私かけてあるんだけど。それ以上かけると塩分とりすぎちゃうんだけども。』
「このくらいかけないと、おいしくないですよ〜?」
『いやそういう問題じゃないってば。』
ドバドバと醤油を振りかける腕から瓶を取り上げ、キッチンにもどす。
後ろから、ええ〜という言葉が聞こえたような気がしたが、振り返らないことにした。
やがて父が自室に戻り、一人取り残されたリビングで醤油まみれになった海鮮丼とにらめっこをしながら、私は本日何度目になるかわからないため息をつくのであった。
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らんちゃん - 深海くん最高でした、、、!! (2018年3月26日 17時) (レス) id: 5da59bc768 (このIDを非表示/違反報告)
ニカ姫 - あんスタの桃季君大好き (2017年6月4日 16時) (レス) id: 39e38305d9 (このIDを非表示/違反報告)
レイア(プロフ) - ヤバイです!ハマりました!!もう部屋の中で一人発狂してました(笑)更新楽しみにしてますね!! (2017年3月29日 3時) (レス) id: f480fe51c3 (このIDを非表示/違反報告)
アクアリウム(プロフ) - お帰りなさいです!めっちゃ更新、続きを楽しみにしていたので帰ってきてくれて嬉しいです!これからも応援してます! (2017年3月27日 18時) (レス) id: 8d5de3cdea (このIDを非表示/違反報告)
しょこらて - たくさん応援メッセージやリクエストありがとうございました(;_;)皆様の温かいコメントは、本当に心の支えになったし、嬉しかったです。これからもあんさんぶるパパーズをよろしくお願いします。m(__)m (2017年3月20日 23時) (レス) id: 7a983a56c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこらて | 作成日時:2016年3月6日 18時