あんさんぶるパパーズ！【短編集】

【朱桜司】〜3〜 ページ30

〜2〜のつづきです。司視点です


久しぶりに見た娘の涙は、私の胸に大きなわだかまりを残していった。


「……はぁ。」


本日、何度目か分からない溜め息が出る。

先程、娘を泣かせてしまったのだ。

理由は自分にも分からない。

厳しく叱りすぎてしまったのだろうか。いや、それは考えにくい。

あんな風に叱りつけるのは日常茶飯事だし、娘は自分のお説教で泣いたことなんか、一度だって無かった。

それに、泣き出す直前の言葉。

あれがどうにも引っ掛かる。

何故、娘はあのような問いかけをしたのだろうか。


うんうんと唸りながら考えていると、目の前にティーカップが差し出された。

メイドだろうかと思い顔を上げると、そこにはいつの間にか部屋に戻ってきたのか、愛しい妻の姿があった。


「あぁ、お姉さま。ありがとうございます。」


高校時代によく使っていたこの呼び名は、実をいうと未だに抜けきっていない。

娘の前ではさすがに封印しているが、二人きりの空間になるとついポロッとでてしまうのだ。

隣に座る妻に軽くキスをして、自分は仕事が残っているから先に寝ていてくれと促すと、何かあったんでしょ？と問い詰められた。

やはり、妻に隠し事はできないらしい。

紅茶を飲みつつ、私は妻に先程の件について相談した。

妻は黙々と頷きながら相談を聞いていたが、話が終盤になるにつれて、どんどん笑顔になっていく。

「What？何故、笑っておられるのですか？」

不思議に思い問いただすと、妻は慈愛に満ちた声で、はにかみながら答えた。



ーー司くん、Aはきっと寂しかったんだよ

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