【月永レオ】〜1〜 ページ23
弥生さん、雑音〜ノイズ〜さんからのリクエストです。
『〜♪』
コピー用紙に乱雑に書きなぐられた五線譜を、一つ一つ確かめるようにしてメロディーを歌い上げる。
これが、私が父を感じることができる唯一の方法だった。
私は、父とあまり会ったことが無い。
父の事をあまり知らない。
単に、仕事が忙しいという理由もあるのだけれど、それに加えて作曲家の父には、妙な放浪癖があった。
母から聞いた話によると、父の放浪癖は学生時代からずっと続いているらしい。
学生時代の父は、とにかく自由奔放でそこら中に五線譜を書きまくっていたような人だったそうだ。
しかも、あの国民的ユニットknightsのリーダーも務めていたんだとか。
母は父の事をよく知っているのに、父が今どこにいるのか、何をしているのかは知らない。
聞いてみても、きっとどこかで宇宙人と交信しているんだよ、と微笑むだけ。
それ以外の事は、教えてくれなかった。
他の子どもたちは、皆父親というものを身近に感じている。知っている。理解している。
なのに、私は父の事をわかっていない。
ーーー私は、このままではいつか父の事を本当に忘れてしまうんじゃないかと怖くなった。
だから、少しでも父を忘れないようにするために、感じるために、父の残した五線譜を、旋律を奏でるのだ。
まるで、父はちゃんとここにいるんだと自分に言い聞かせるみたいに。
目の前の魔物に怯えた騎士が、自分は強いんだと自分に信じ込ませる事で、恐怖を覆い隠すように。
不意に、戸棚の上においてある写真の中の父と目があった。
オレンジ色の癖っ毛、エメラルドの様な切れ長の双眼、整った顔立ち。
男の人にしてはあまり太くない腕で、まだ幼い私を抱き上げている。
私に向かって、嬉しそうに微笑みながら。
この写真を見ると、なんだか胸が苦しくなって、不安になるのだ。
もう暫く会っていない父は、私の事を覚えているのだろうか。
会ったら、こんな風に笑いかけてくれるのだろうか。
もしかしてもう、何とも思っていないのだろうか。
『…っ!』
そこまで考えて、思考を放棄する。
これ以上考えても、自分が惨めな思いになるだけだ。
だったら、妄想するほうがいい。
私は気を紛らわすようにして、五線譜をにぎりしめた。
あぁ、今日はなんだか霊感(インスピレーション)が沸いてこない。
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らんちゃん - 深海くん最高でした、、、!! (2018年3月26日 17時) (レス) id: 5da59bc768 (このIDを非表示/違反報告)
ニカ姫 - あんスタの桃季君大好き (2017年6月4日 16時) (レス) id: 39e38305d9 (このIDを非表示/違反報告)
レイア(プロフ) - ヤバイです!ハマりました!!もう部屋の中で一人発狂してました(笑)更新楽しみにしてますね!! (2017年3月29日 3時) (レス) id: f480fe51c3 (このIDを非表示/違反報告)
アクアリウム(プロフ) - お帰りなさいです!めっちゃ更新、続きを楽しみにしていたので帰ってきてくれて嬉しいです!これからも応援してます! (2017年3月27日 18時) (レス) id: 8d5de3cdea (このIDを非表示/違反報告)
しょこらて - たくさん応援メッセージやリクエストありがとうございました(;_;)皆様の温かいコメントは、本当に心の支えになったし、嬉しかったです。これからもあんさんぶるパパーズをよろしくお願いします。m(__)m (2017年3月20日 23時) (レス) id: 7a983a56c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこらて | 作成日時:2016年3月6日 18時