バブみのあるお姉様に転生したなら推しを甘やかしたい。

まさか私がアクドルになるとは２ ページ39

私はマルちゃんを壁に追い込み、トンと片手を付いた。そして頬を撫でながらゆっくりと顎を指先で持ち上げる。じっと真正面から見つめた私はうっそりと口角を上げると耳元で囁いた。

「さて…マルちゃんお返事は？」
「〜〜〜…ひゃぃ♡」

即落ち二コマくらいでチョロかったなと思ったのは内緒である。因みに様付けをしたらマルちゃんの声掛けにも返事をしないからね？と笑い掛ければ…頬を赤面させて「ぜ、善処するわ」と呟いた。

「ことろで、作詞作曲は私が行っても？」
「！？っ…待って頂戴、そんな事も出来るの？」
「何なら楽器も弾けるけど？」
「お嬢様凄過ぎない？それは流石に規格外過ぎるわよ」
「そう？うーん…それじゃあピアノで一度演奏して歌って見るから、音楽室へ向かいましょうか？」

先生からの許可を貰いマルちゃんを連れて音楽室へ向かう。ピアノへ深々とお辞儀して腰掛ければ、そっと両手を白盤へ添えて力強く奏でた。前世の昔や今で流行った歌を思い出してサビの部分を口吟む…バラード、ミディアムテンポ、アップテンポと曲が切り替わるとピアノを弾く指先は流れた。

「この曲には振り付けもあるんだよね、因みに私はラブソングが好きで…酸いも甘いも噛み分けた悪魔(ひと)の恋愛模様って…何だか苦くて切なくて素敵だと思わない？」
「……」
「あれ？おーい、マルちゃん聞いて……る？」

何も発しないマルちゃんに対して不思議に思い、一度ピアノから手を離し演奏を中断し彼女の方を振り返る。すると大粒の涙を流していた。聞いた事のない旋律、すっと胸に入り心に残る愛の詩、耳に残り口吟みたくなる言葉の数々…それに感動して泣いてしまったらしい、驚きでピアノから飛び退きマルちゃんの元へ向かう。徐に取り出したハンカチを優しくマルちゃんの頬にそっと押し当てた。

「ごめんなさい…感動、してしまって…」
「あぁー…分かるよ。明るい曲も聞いていて楽しい気分になるけど、暗い曲は悲しい気持ちに感情移入しちゃうよね」

流石、前世では有名な曲の数々である。悪魔は飽き性な性格が多い…恋愛だって勿論そうで誰かを一途に愛するとか珍しいだろうし、手に入らない相手を想うのは悪魔からすれば滑稽でしかないと直ぐにでも諦めてしまう。サキュバス、インキュバスは特定の相手は作らず多数で様々な恋を行う…浮気だ何だと相手から詰め寄られ喧嘩になる事を避ける為と言うのだ、だからこそ真っ直ぐなラブソングは彼女の心に強く響いたのではないかな。

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