バブみのあるお姉様に転生したなら推しを甘やかしたい。

私はカルエゴくんの元婚約者である２ ページ3

Aは大変優秀な令嬢だと言われるようになる、人ならぬ、悪魔が変わったようなと周りも囁いた。彼女は悪魔だが中身は優しい天使の程に穏やかで落ち着きのある物静かな雰囲気を纏っている。魔烏の濡れ羽色の髪が流れ、本を読む所作は美しく折れそうな程に細い指先がゆっくりと捲られていく。楽器も努力家で諦めず何度失敗しても練習したし、ダンスも全て完璧にこなせるようにと努力した。Aは並外れた努力家で負けず嫌いな才女であり完璧な淑女とも言われた。

かと思えば、唐突に魔術を勉強したいと庭に飛び出して行くし、運動しようと走り回り淑女では有り得ない木登りを始める。カロリーを気にせず食べられるお菓子を作りたいと料理長へ直談判し、美味しく甘さ控えめな手作りお菓子を作りそれがクチコミで広がりAの知らない所で商品化したりと様々な事をして生き生きと過ごしているらしい。

本の虫、Aは魔界に転生して歴史について調べる事がとても好きだった。何故なら彼女はオタクだったから、魔入間の世界で知りたかった知識が全て書斎に残っている。記憶がない時はこんな埃っぽい所へは絶対に来たくないと拒絶していたが、今となっては地べたに寝転び沢山の本を積み重ね何度も繰り返し読み漁った。あぁ…この世界に生まれて来て本当に良かったっ！

ーーー

カルエゴくんがケルベロスを躾け手懐けたと耳にした。最近全く会えていなかったから、どこかそうなのかな…心配だなとは思ってはいたが。背中を抉るような傷跡が残っているのを漫画で読んだ知識から知っていた私は、どうしても会いたいと両親に頼み込んだ。我が儘な娘に戻ってしまってごめんなさい、でも会いに行かないいけない気がすると思ったから…

会って早々、私は大きく息を呑んだ。息をする事も忘れカルエゴくんを抱き締める。嫌がる素振りで鬱陶しそうに「離れろ、邪魔だっ！」と言う彼の頭を優しく撫でる。痛かっただろう、怖かっただろう、背中を庇っており顔や身体は擦り傷が絶えない。どんな慰めもきっと彼には必要のないもので、でも言わせて欲しい。

「良く頑張ったね…」
「……はっ？」
「良い子、良い子だね…」
「な、んで…貴様が泣くんだ…」

分からない…貴方がどれだけ辛くても泣かないから、私が代わりに泣くんじゃないかな。そう言えば狼狽えたカルエゴくんは心底馬鹿馬鹿しいと呆れたようにため息を吐いて、私の頬に伝う涙を優しく拭ってくれた。それに微笑んだ私はまたそっと頭を撫でた。

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