あの春、君と。 (ページ16)

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本番が近付くと

衣装部屋でする事もなくなった。

やがて開場し、

ザワザワとお客さんが入り始める。

裏では変わらず、ひっきりなしに

人が動いている。

湿布やテーピングを求めて

私の元へやっくるスタッフさんが増える。

やがて遠くの方で

円陣の声が聞こえた。

本番が始まると、

衣装部屋では出番が終わった衣装たちが

クリーニングへ出すカゴに

ぽいぽい放り込まれてゆく。

そのお手伝いをしていた。

ライブが中盤に差し掛かり

スタッフさんの大きな声が響く。

｢誰か！氷！冷やすもの持ってきて！｣

｢はい！｣

たしか氷嚢がバックにあったはず。

急いでケータリングの横にある

大きな冷蔵庫から

氷を氷嚢に入れ、水も少し入れる。

久しぶりに走った。

さっきの焦ったスタッフさんの声が

不安を大きくする。

どうしたんだろ、、

明るい通路から、

暗いたくさんの足場が組まれた場所に出る。

｢氷持って来ました！｣

私の大きめの声に

さっきのスタッフさんがこっちこっちと

誘導してくれる。

空調が聞いてるはずなのに

熱気のせいかだんだん暑くなり

じんわり汗がにじむ。

｢次の出番までちょっと時間あるから

それまで膝冷やしてあげて｣

その視線の先には

白いTシャツ、ベージュのパンツに

サスペンダーを身につけ

ぐったり椅子に座る人がいた。

その俯いた綺麗な横顔

濡れた髪

光るピアス

透き通るような白い肌

思わず見とれてしまっていた。

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