【WT】ゾンビになるまでに、尾も白いことやり尽くす (ページ18)

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Nakamu side
「この住所ってさぁ…もしかしなくても……」
「うん、多分……そういう、ホテル……」

村部からのメッセージに書いてあった住所を調べてみたところ、所謂ラブホテルと言われるものがヒットした。
口に出すのははばかられて、思わずきんときと2人で顔を見合わせる。

「なんでそんな所に居るんだよ……いやまあ、目的は明らかになってるようなもんだけどさ」
「まぁ、上司との付き合いでキャバクラとか行って、その流れでラブホ……ってのは俺も経験したけどね」

きんときの思いもよらぬカミングアウトに、俺は目を見開いた。

「え、何その目」
「いや……」

きんときは怪訝そうな顔で俺を見る。俺は少し言葉に詰まってしまったが、何とか言葉を紡ぎ出した。

「……正直言うと、意外だった。学生時代は真面目っていうか……大人しい感じだったから」
「あぁ……まあ、拒否権が無かったって言う方が正しいかも。正直、どっちの方がマシだったか分からないんだよね」

俺が率直な感想を告げると、きんときは遠い目をして答える。
また濁った目に戻りかけるが、頬を引っぱたいて正気に戻った。

「ま、今の俺はもう自由の身なわけだし？村部を助けても別にいいでしょ。で、Nakamuはどうするの？」

きんときが俺に尋ねてくる。俺は少し考えてから口を開いた。

「うん……まあ、取り敢えず様子を見に行くか」
「りょーかい。あ、ちょっと待って。１回家に寄らせてくれない？」

きんときは俺の言葉に頷くが、ふと何かを思い出したような顔をする。
流石に、スーツ姿でゾンビの群れに飛び込んでいくのは気が引ける。食料や道具だって、あって困るものは無いだろう。
俺はきんときの要望を了承した。

「家に寄るって言っても、どうやって行くの？公共交通機関は動いてないし、ゾンビだらけだよ」
「ん〜……車とか、バイクは？乗り捨ててあるやつなんていくらでもあるじゃん」

俺はきんときの思いもよらぬ提案に目を丸くした。
確かに、駐車場や路上に停められている車やバイクはいくらでもある。

「車かぁ……俺、免許持ってないんだけど」
「こんな状況でそんなこと言ってられないでしょ？」

そう。俺は運転免許を持ち合わせていないのだ。
そんな俺を見てきんときが呆れたように笑う。事故を起こして死亡なんて笑えない。
だがしかし、徒歩でゾンビ共から逃げ切れるとも限らない。

「……まあ、それも…そう、か……」

覚悟を決めた俺は、きんときと2人で駐車場へと向かった。