【WT】ゾンビになるまでに、尾も白いことやり尽くす (ページ16)

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お前もそうだろ？と、金田は俺のリュックに付いているチャームを指差した。

金田は懐かしむように自分のチャームを優しく撫でると、俺の顔を見てニヤリと笑った。その笑みは、昔から悪巧みを考えている時の顔と全く同じで。

「……俺さ、どんなにクソな会社だったとしても、それなりの落とし前は付けたいんだよね。だからさ」

彼は鞄から封筒と真っ白な紙を取り出すと、そこら辺に置いてあったペンで何かを書き出した。

「退職届です！よろしくお願いします！！」
「ッ？！ふっ、アッハハ！！」

金田は高らかにそう言い放って、上司の机に封筒を物凄い勢いで叩きつけた。まるで机を叩き割らんとする勢いに、俺は思わず噴き出してしまった。あぁ、懐かしいなこの感じ！高校の頃に戻ったみたいで、少し嬉しくなる。

「いーじゃん、いいじゃん！最高！」
「でしょ？これで俺も自由の身になったわけだし、これからどうする？」

憑き物が取れたような顔で笑う金田に、俺は例の『ゾンビになるまでにやりたい事リスト』を見せた。金田は興味津々な様子で覗き込んでくる。

「取り敢えず……ここに書いた事をやり切る！それが当面の目標かな」
「おー。それは全然構わないんだけどさ、表紙に書いてある『Nakamu』って、中村のこと？」
「うん、そうだよ」

俺は頷くと、表紙に書いた『Nakamu』の文字を指さして見せた。金田はそれを見て、何かを考え込んでいるようだ。

「んー……」
「え、何？急に黙らないでよ」

金田は顎に手を当てて首を捻る。彼は暫く「あー」とか「んー」と唸っていたが、やっと考えが纏まったようで俺にこう尋ねてきた。

「俺も自分のあだ名考えてたんだけどさ、『きんとき』なんてどう？苗字の金田と名前の時実から取ってさ」

思いもよらぬ言葉に、俺は少し言葉を失ってしまった。てっきりあだ名に対しての不満を言われるとばかり思っていたのだ。

「……はは、いいんじゃない？俺は賛成」

俺は口角を上げて笑う。なんだか、これはこれでいい名前だなと思ってしまった。

「じゃ、改めてよろしくな！きんとき！」
「うん！よろしく、Nakamu」

俺達が固く握手を交わしていると、ポケットに入れていたスマホが振動した。
一体なんだと思ってスマホの画面を見ると、グループラインに1件のメッセージが届いていた。
それは村部からのもので、内容はどこかの住所が書かれているだけの簡素なものだった。