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部屋に着いてまず、俺はまだ何も書いていない真っ白なノートを1冊取り出した。
ノートの題名は、『ゾンビになるまでにやりたい事リスト』。どれだけ書くかなんて決めない。死ぬまでにやりたい事全部書いて、そして、全部やってみせる。
「はは、誰とだろうな。……でもまぁ、多分あいつらだろうけど」
こんな時でも思い浮かぶのは、高校時代のアイツらで。俺の死に際に誰がいるのかなんて分からないけれど、きっと俺がやりたい事を一緒に出来るはずだ。
「早速書くか!時間は待ってくれないからな!」
1人そう呟いてからペンを取り出すと、俺はペンをノートの上で走らせた。
・まだ読んでいない漫画をイッキ読み
・スカイダイビングに挑戦
・みんなでキャンプに行きたい
・仲間と飲み会をやる
・ヒーローに変身したい
まだまだやりたいことは沢山あるが、今はこれぐらいに留めておこう。俺は満足気に頷くと、シャーペンを置いてノートを閉じた。
「あっそうだ、名前……」
ふと、表紙に『中村 瑞希』と書こうとした手が止まる。もうこの世界は、今までの俺が生きていた世界じゃない。ならば、俺も『今の俺』を捨てるべきじゃないだろうか。
「……Nakamu、でいいや」
ペンを持ち直し、『Nakamu』とノートの表紙に書く。なんだか不思議な感覚だが、これで過去の自分を忘れて吹っ切れたような気がする。
「そうと決まれば、早速みんなを探さないと!でも、携帯もネットも使えないし……って、あれ?」
ゾンビパンデミックが起きてからずっと使えなかったはずの携帯がすんなりと使用出来る。それなら使わない手は無いと、俺は数ヶ月前の連絡で止まっているグループラインにメッセージを送った。
【中村:みんな、今何してる?】
グループラインにそう送るが、そう簡単に既読が付くはずも無く。まあそれぐらいは予想済みだったので、俺は唯一居場所を知っている金田の元へ向かう事にした。
「転職とかしてないなら……」
彼は確か、近くの広告代理店で働いていたはずだ。
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作者名:あんこ | 作成日時:2023年12月28日 21時