【WT】ゾンビになるまでに、尾も白いことやり尽くす (ページ1)

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プロローグページ1

中村(Nakamu) side

高校の時は、世界が輝いて見えた。友人達とバカみたいなことやって、勉強もそれなりに頑張って、部活もそこそこに一生懸命やって、『大人』に憧れていた。

大学に入ったらもっと違う世界が見えるかなと期待していたけど、高校の時とそんなに変わったように見えなかった。ほんの少し、高校時代の親友達が恋しくなる時もあったけれど、そこそこ楽しい大学生活も安らかに幕を閉じた。

社会人として働き始めてから、違和感を感じることが増えた。仕事は退屈で、色褪せた世界でただ働いているだけ。
毎日毎日同じことの繰り返し。なんだか、灰色の世界にいるみたいだ。

「中村君、昨日言っていた書類、もう出来てる？」
「あっ、はい！」

上司から声をかけられ、慌てて返事をする。
『憧れの大人』なんてものはただの幻想で、俺はただの歯車の一つに過ぎない。そんな簡単なことに、ようやく気付けた。

仕事を終えて電車に乗り込むと、俺と同じように疲れきった顔をしたサラリーマン達の姿が嫌でも目に入る。
新社会人の20代ぐらいから、定年間近の50代ぐらいの人達。皆一様に同じような顔をしていて、ああ、今日が終わったんだという達成感と喪失感が入り交じった不思議な気持ちになる。

「まもなくー、電車が出発いたします」

アナウンスと共に扉が閉まり、ゆっくりと電車は動き始める。明日も明後日も明明後日も、このままずっと続いていくんだろう。それはなんだか、とても味気無く思えた。

……明日、ナニカが起きて、こんなつまらない日常が面白くなればいいのに。

ずっと前から考えていて、それでも起こりうるはずの無いことだと決めつけていた『それ』は、突然現実のものとなった。